火曜日の幻想譚 Ⅳ
464.なまはげ
うちっところの穀潰しが、今年、なまはげをやることになったんだと。
高校を出てから20年近く、ろくに働きもしねえで、ただ飯ばっかり食らっとったのになあ。いっくら村が過疎だからといったって、人材難にもほどがあるたあ、まさにこのことだぁ。
おや、ようやく隣のうちでおっぱじめたか。「泣ぐごはいねがぁ」って、おまえが毎晩、将来を悲観して泣いとるだべや。おうおう、がきががきを怖がらせとる。こっけいなもんだの。普段はあんなぼんやりしたやつでも、やるときゃやるもんだ。馬子にも衣装とはよう言ったもんだ。
おっ、ようやくうちにも来たぞ。どれ、せいぜい丁重に迎えてやるとするか。ほれ、景気付けに酒ばちょっくら飲んでいけ。普段ただ飯を食らっとる割には、よう頑張っとるからな。まだまだ周る家があるんじゃろう、それくらいにしとけ。さ、もうひと頑張り行ってこい。
おお、帰ってきたか、どうだった。たまには汗を流して、人さまのためになるのもいいもんじゃろ。何? 一緒になまはげをやった人と友だちになって、バイト先を紹介された? ほほう、そんな幸運なこともあるんじゃな。もしかしたら、なまはげに怠惰をはらわれたのはおまえ自身だったのかもしれんのう。