火曜日の幻想譚 Ⅳ
465.別のゲーム
テレビゲームが苦手だ。
やっているうちに嫌になってくる。自分の思うように動いてくれないし、ストーリーがよく分からないのもイライラする。なんで物語を自分の手で進める必要があるのだろう。映画やアニメのように、そっちが勝手に物語を進めてくれても、こちらは一向に構わないというのに。
そんなわけで、子どもの頃からあまり触れずに生活をしてきたのだが、大人になり、結婚をして、子どもができるとそうもいかない。一家だんらんの中、コミュニケーションの一環として、家族とともにコントローラーを握るという状況が結構な確率で出てくるのだ。
「パパ、下手すぎー」
息子にからかわれながら、何度も敗北を繰り返す。これはこれで息子が喜んでいるようだから構わないが、やはり心のどこかで悔しさが募る。
それに、やっぱりものごとは、全てプログラムされているのだから、それをすぐに見たいという思いがある。このキャラクターたちが、どういう経緯で闘いをおっぱじめ、これからどういうふうになっていくのか、今すぐ教えてくれたって構わないじゃないか。
諸々の状況が気になるのと、常に負け続けて悔しいのとで、夜、子どもが寝静まった頃に練習をしてみる。しかしうまくなる気配はない。むしろ、集中力が切れてどんどん下手になっていく始末。
怒りのあまりコントローラーを投げつけてしまう。無線のそれは鈍い音を立てて壁に当たり、そのまま床にゴトンと落ちた。
怒りのあまりコントローラーを投げる、というゲームだったら、息子に勝てる自信があるのになあ。投げたくなる気持ちを多少は理解してくれる人もいそうだし。そんなことを思いながら、コントローラーが壊れていないことを確認して、寝る準備を始めた。