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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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365.カレー



 僕らは今日も、カレーを作ろうとする。昨日と同じように、カレーを二人で食べようとする。


 ことの起こりは、付き合い始めて数日がたった頃だった。
 お互いインドア派ということで意気投合し、交際を始めた僕らは、その日も家デートにしけこんでいた。
 だらだら映画鑑賞なんかをしながら (実際は僕も彼女も鑑賞なんかしてないんだが)、思いきりいちゃいちゃしていたら、彼女が提案をしてきたんだ。
「ねぇ、一緒にカレー作らない?」
おなかも空いているし、何より楽しそうだ。僕が断る理由なんか、あるはずもない。

 カレーのルーも食材も、運良くうちにそろっていた。極力外に出たくない僕らは、ホッとしながら早速調理に取り掛かる。
「にんじん、OK」
「お肉も準備できた」

「じゃあ、次はじゃがいもか」
ここからだった。

「え、じゃがいも入れるの?」
「うちは入れるよ」
ここでじゃがいもを入れるかどうか、一大論争が発生する。何とか彼女が折れてくれてじゃがいもが投入される。だがその直後、
「にんにくは入れないの?」
「え、にんにくなんか入れるの?」
今度はにんにくを入れるかどうかで言い争い。僕が渋々折れることに。
「たまねぎはみじん切りでしょ」
「いや、ざっくりくし型だよ」
またもや対立の発生だ。

 僕らのいさかいは、煮込む段になっても尽きることはない。
「隠し味に、インスタントコーヒー入れないの?」
「チョコは聞いたことあるけど、コーヒーは知らないよ。それよりはちみつ入れないと」
カレーができあがるまで、僕らは衝突しっぱなしだった。

 それでも、おいしいものを食べれば、ふたりともご機嫌になるだろう。そう思い、僕らは二人してカレーライスを口に運ぶ。
「…………」
「…………」
お互いの好みが邪魔をして、お互いの好みではなくなっていた。


 でも、だからこそ僕らは、カレーを作ろうと提案し続ける。いつか分かりあえて、おいしく食べられる完璧なカレーを作れるように。

 そうなれるように、未完成の僕らはけんかをして、カレーを作り続けるんだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔