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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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370.きしみ



 安アパートのせいか、地震が来る前に家屋がきしむ。

 特に寝ているときに分かるのだが、揺れが来る前に「ギイイイィ」と家屋がきしむ音がするのだ。その直後、「ガタン」と揺れが発生する。

 ここには数年間住んでることもあって、避難するレベルのものはともかく、それなりに大小の地震には遭遇してきた。そこで分かったことなのだが、大きい地震ほどきしみと揺れの間隔が長いようだ。
 すなわち、小さいものは「ギイイイィ、ガタン」ときしみの後すぐに揺れが来るのに対し、比較的大きいものは「ギイイイィ……、ガタガタガタッ」と多少の「間」があるのだ。

 ところで先日、いつもより大きく家屋がきしんだ。だが、特にまだ何も起きていない。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔