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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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381.自動改札機



 普段、生活をしていて、とても恐ろしく感じることがある。その一つが、駅にある自動改札機だ。

 皆さんも日頃、通っているであろう、駅のホームの入り口に設置してあるあの自動改札機。私はあれが、とにかく恐ろしく思えて仕方がないのだ。別に、料金が足りなくて、飛び出してくる板にぶつかるのが恥ずかしいとか、下手に手間取って、後続のかたがたに迷惑をかけるのが嫌というわけではない。

 恐ろしいと感じるその理由は、私の奇妙な妄想に端を発しているのだ。

 自動改札機のあの狭い間、例えばあそこに誰かが、目では見えづらい極細の糸のようなものを、ピンと張っておいたとしたらどうだろうか。ぼんくらな私は、間違いなくその糸を脚で引っ掛けてしまうに違いない。そして、その糸に結び付けられているのが、手榴弾のピンだったらと考えると、日々、なんてこともなく行っている改札を通り抜けるという動作が、空恐ろしくなってきて夜も眠れない。

 別のヴァージョンでは、張ってあるものがピアノ線ではないかと考えてしまう。朝のラッシュに、電車に乗り込もうと次々改札を抜ける人々。私を含むみんなが、無残にもピアノ線で上半身と下半身を真っ二つにされて、プラットフォームでもがいている場面を想像し、一人、震えているのである。

 妄想である、そのことは十二分に分かっている。それでも、ああ、私は自動改札が怖くてたまらないのだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔