Straight ahead
誰かが、口笛を吹いている。携帯電話をポケットにしまい込んだ高崎は、再び歩き出しながら、周囲を見回した。その口笛は一旦止まって足音に変わったが、それも聞こえなくなった。公園の反対側の街灯が途切れる下り坂にさしかかったとき、口笛が復活した。それは目の前で鳴っていて、街灯の柔らかい光が届かない暗闇から一歩を踏み出した幸樹は、言った。
「こんばんは」
右手と一体化したようなナイフが突き出され、高崎は飛びのくように後ずさったが、足が利かずに尻餅をついた。間合いを詰めた幸樹はナイフを高崎の喉元に突き刺して引き抜き、失血死するまでその顔を見下ろした。
作品名:Straight ahead 作家名:オオサカタロウ