Straight ahead
「ごめん、いつもこんな感じで。ゲンゲン、綿ちゃん、ママ以外の誰が来ても、開けたらあかんで」
「分かった。帰ってきてな」
花梨はそう言うと、コントローラーを膝の上に置いて体を伸ばし、華奢な腕で愛華を抱きしめた。これではどっちが親か分からない。愛華はうなずくと、花梨から離れて、早足で出て行こうとする綿野の背中を捕まえながら言った。
「そうはさせん。私も連れてって」
一階に下りて、ミニカの運転席に乗り込んだ愛華はスマートフォンを取り出し、リモートで果歩のスマートフォンに繋ぐと、綿野に手渡した。ディスプレイに表示された地図を見て、綿野は顔をしかめた。
「地図やったら、おれも持ってる」
「それは今、果歩ちゃんが見てる地図やねん。どこに行こうとしてるか、分かるかな?」
まさに、源が選びそうな場所。自分でもそうするだろう。ずっと助手席でナビをしてきたのだ。考えることなんて、手に取るように分かる。綿野は呟いた。
「サワクラを目的地にしてる」
「行き方は分かる?」
綿野はうなずくと、スマートフォンを愛華に返した。地図は必要ない。
自分の家に帰るようなものだ。
作品名:Straight ahead 作家名:オオサカタロウ