ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座
これだけ癒されたい人がいるのだから、それを病院が放っておく手はない。
〈癒し内科〉などと看板を出すのも一つの案だ。(患者さんは「エッ、イヤシイ科?」などと不審に思うかもしれないが)
特別な設備はいらない。
何ごとも黙って聴いていられる人を常時数人用意するだけでいい。
時にはお茶やコーヒーのサービスをするのがいいだろう。
スタッフはなるべく普通の人がいい。
あまり美人やハンサムだと、患者さんが緊張して話しにくい。
しかし、あまりひどい顔の人もよくない。気持が悪くなって癒しの効果がなくなる。
料金設定は難しいところだ。
当面は健康保険にはならないから、自費診療になる。
治療内容に応じて、並、上、特上の三段階ぐらいには分けられる。
並で一五〇〇円、上二五〇〇円、特上五〇〇〇円ぐらいの開きは致し方ない。
私の担当はもちろん特上だろう。
相談内容が込み入った場合には、「時価」と設定されることもある。
お釈迦様は、この世に生きていること自体が苦行であるとおっしゃった。
イエスキリストも、来世に比べるとこの世は苦しいものだとおっしゃった。
私は、人生はそれほど苦しくない人もいるだろうが、苦しい人もいるだろう、と公平な意見をもっている。
私も癒されたい事があるが、医者にかかるよりは、家の猫で間に合わせている。
猫の本心は分からないが、一応聞いてくれるし、何を言ってもニャンとも言わないから、一応満足している。
作品名:ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座 作家名:ヤブ田玄白