ドクターヤブ田の、血液型大研究
一時間以上たったが、彼女たちはまだ血液型の問題に取組んでいた。
結論は出そうで出ない。
同じ型でも、少しずつ例外が出るのが、血液型と性格・行動パターン理論の欠点だ。
彼女たちは、次々に例外を認めて、
「それはBの新型かもしれない」などと平然としている。さらに、
「朝起きたとき、歯を磨かずにまずご飯を食べるのは、O型だから」
「『○○まつり』のときに、約束を忘れて隅田川の花火を見に行くのは、二面性があるからABに違いない」など、次々に興味深い説を述べていた。
これほどまでに、彼女たちをとらえる血液型の魅力はどこにあるのだろう。
一つの理由として、人間の性格や行動パターンを何かに結びつけて理解したい気持ちが強いのだろう。
しかし、もともと人間の性格や行動は、複雑で不可解なものだ。
ロボットだって、配線の異常によっては不可解な行動をとることもある。
動物も同じだが、猫は特に不可解だ。
何年も一緒に住んでいるのに、猫の気持ちはわかりにくい。
呼んでもすぐには来ないし、やっと来たかと思うと、カツオブシのあるキッチンへ案内したりする。
〈ひょっとすると、猫の血液型はすべてABではないだろうか?〉
血液型愛好家たちの影響を受けた私は、思った。
さっそく、かかりつけの獣医さんに聞いてみたところ、
猫の血液型は人間と違って、ABO式ではないとのことだった。
私は、猫の血液型が私と違うことを知って、安心したが、ちょっと寂しい気もしたのである。
作品名:ドクターヤブ田の、血液型大研究 作家名:ヤブ田玄白