冬の思川
焼き肉店
店は普通の方なら
明るい店なのだが
僕は視力が悪いから
自分のつま先がやっと見える程度になる
君にはそのことは話してあった
君はすぐに僕の手を繋ぎ
店員の後を追ってくれた
まだ若いと思いながらも
介護老人そのままな姿に
僕自身が呆れ悲しくなる
焼き肉も自分では焼け具合が分からない
君は当たり前のように
カルビを焼いてくれた
黒いテーブルに黒い皿
僕にはたれが見えない
恥ずかしくて
それを君には言えなかった
僕はたれをつけずに
カルビを口にした
君は僕の目の前に
たれの皿を置いてくれた
その、さりげない仕草
「私の仕事は介護ホームの看護師ですよ}
と君は言った