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空と海の道の上より Ⅶ

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 七時四十分、県道に出て右、大頭の方に。石鎚橋を渡る。中山川、水が澄んでとてもきれいな川、川幅も広くゆったりしている。
 ここから小松町。八時、大頭バス停前、小さな公園で休憩。湯浪五キロの標識。

 角さんは文学青年でとても純粋なところがあり、東京から屋久島に移り住んで、自給自足のような生活をしている山尾さんという人の、お金のために生きてはいけないという話、この人はNHKの『心の時代』などにも出ている有名な人だそうです。
 また歩いて放浪しながら詩を書いている、高木護という人の、歩いていると、時に風の色が見えるという話など、心に残る楽しい話を聞かしてくれる。
 私に、「スタインベックの『朝めし』という本をぜひ読んで下さい」と言われる。話を聞きながら時々涙がこぼれそうになる。三十分ほど休憩して出発。

 すぐに国道十一号線を横切り石土神社の前、四国の案内図を見て数人のお年寄りとお話する。
 昔はここが石鎚山にも上る道だったこと、お婆さんが、去年横峰寺迄歩いてお昼までに着いたこと、など教えてくれ、石鎚山も教えてくれる。山の間から頂だけ見える。それだけで心が弾んで元気が出る。
 九時十分、梅ケ瀬橋、妙之谷川。道はきれいだが、田舎の、のんびりした車のほとんど通らないところを気持ち良く歩く。ここから川に沿って山の中へ。
 川のせせらぎを聞きながら舗装された道を上っていく。ゆっくりした上り。

 九時二十五分、道に座り込んで休憩。ここから美しい川沿いを歩く。
 十時七分、横峰寺入り口、ここから山道になる。
 十時四十分、休憩所着。ここから細い山道、ここで持っていたお茶が無くなり、角さんがガスボンベで谷の水を沸かしてくれ水筒に。男の人は重い荷物を持ってくたびれ、私はいい目をさせて頂き、元気になり申し訳ないことです。  
  
 十一時出発。ここから横峰寺二・二キロ。暫く歩いて清流で顔を洗う。汗をかいているので、冷たい水がとっても気持ち良い。
十一時四十五分、だい分上ってきた。谷川の水の音が下のほうで聞こえ、木の間から見える山々が美しい。
 私は休憩せずにゆっくり歩くのが自分のぺース。角さんは足が痛いので時々休憩。それぞれぺースが違うので自分の歩きやすいように別々に歩く。

 十二時、後六百メートルのところに休憩所があり、遅れている角さんを待つ。今日は天気がいいので杉木立の中鶯の声を聞きながら。山道を歩くのはしんどいけれど本当に気持ちがいい。
 パンを少しとさっき沸かしてもらった白湯を飲む。今日は何も持っておらず蜜柑でも買ってくれば良かったと思う。

 角さんがなかなか来ないので出発の準備。行こうと思ったところに角さん到着。
 私はお寺で時間がかかるので、ちょっと話してまた先に進む。ずっと丁石の仏様がある。鳥の声と、下の川の音以外何も聞こえずとても静か。
 十二時半、仁王門着。
 すごくきれいなお寺で掃除が行き届き、本堂にも上がってお参りするようになっている。
 お昼時で誰もいないので、たくさんお経を唱える。山を上って来た身体には本当に気持ちがよい。
 納経所で昨日のお礼と星ケ森(石鎚山の遙拝所でお大師様が厄除けの星供養をされたところ)、六十一番香園寺に下りる道を尋ね、一時半出発。

 星ケ森から石鎚山を眺めると、頂きがうっすらとはるかに見え高いのに驚く。ここで石鎚の神様にお礼を申し上げる。

 お寺の上の道を通り、車の人たちが歩く道を下る。車の人もふうふう言いながら上ってくる。私はお寺の前まで車が来るのかと思っていたが、車の人も少しは歩かねばならないようです。

 一・二キロ下ったところから左の遍路道へ。
 最初は少し急な下りだけれど、後はずっと尾根伝いを歩く。きれいな景色を眺めたり話をしたり、時には一人で南無大師遍照金剛を唱えながら。

 三時、少し休憩。今日はお弁当を作ってもらわず何も買っていなかったので、私はパンを一個と、角さんに頂いたソーセージを一つ食べただけ。角さんはソーセージ一つ。私はいつもお昼もちゃんと食べるので、お腹が空いて仕方がない。山を下りたらケーキとお茶でも飲もうと話す。
 山の間から瀬戸内海や下の町が見えとても美しい。木のトンネルを抜けながら気持ち良い尾根を歩き続ける。時々蛙が飛んでびっくりする。

 四時四十分、香園寺奥の院着。ここで休憩。
 角さんは足が痛いのでもう少し休むというので先に出発。ここからは細いけれど舗装された車の通れる道。
 五時、左にきれいな池、大谷池。町も近づく。さっき上から見た海も近く、今日は少し曇って幻想的な感じがする。きれいな景色で疲れも飛びそう。照ちゃん宅に泊めてもらえ、神社もすぐ近くなので余計元気が出るのかもしれない。
 
 角さんにも何度も「元気ですね」と言われ、昨日から二回も「天使か悪魔かわからない」と言われる。私はそれを聞いて大笑い。

 最後はまた遍路道を通って五時十五分、高鴨神社に。お参りして五時二十分、香園寺到着。
 ここは美術館のような四角い建物のお寺、中に入ってお参りすると、まるでコンサートホールのよう、山の中を歩いて来た者にはこの超近代的な建物には驚かされてしまう。椅子に座ってお経をあげるが、何だか勝手が違い落ち着かない。
 六時、角さんはここの宿坊に泊めて頂き、私は照ちゃんに迎えに来てもらう。大阪のおっちゃん(伯父)も神社に来ていて一緒に迎えに来てくれる。おっちゃんからお接待といって一万円頂く。

 夜、皆で焼肉を食べに連れていってもらう。私はお昼を抜いていたので、遠慮もないし思いっきり食べお腹いっぱい。お参りの時は肉は食べないほうがよいと言われますが、私は断っているわけではないので頂きました。

 照ちゃんの部屋で一人、宗次郎の土笛を聞かせてもらっていると、まぶたの裏に海岸線を一人で歩いている自分の姿が浮かんでくる。何とも言えない気持ちになる。
 子供たちと遊んだりしていると、早く家に帰りたいなと思う。とてもかわいい子供たちです。
 食事の前、一番にお風呂にも入れて頂き、洗濯も音楽を聴いている間に干して頂き、十時、そのまま眠ってしまう。

 四時に目が覚め、これを書く前、宗弘ちゃんからの手紙を読む。読んでいて涙が止まりません。私も先が見えてきた時が大事とは思っていましたが、また心を引き締めることができます。
 今日は照ちゃんの家に泊めてもらっているので、久しぶりに緊張を緩め、ゆったりした気分になれ、有難いことと思っています。

 私は一番から高野山に、家には帰らず直接お参りするつもりでしたが、乗物に乗ってと思っていました。そこでお世話になった方々にお礼の手紙を書いてから帰るつもりでした。が、手紙を読んで考えますと、歩いてお参りしたほうが緊張感を持ってお参りできるような気がします。
 身体の調子が良ければ、和歌山は勝手の知ったところですし、ぜひそうしたく思います。

 前神寺迄の予定が香園寺迄しか行けなかったので、朝、照ちゃんが仕事に行く時に一緒に香園寺迄乗せていってもらい、神社にもお参りします。
 それからお墓にも寄るので、今日の予定はまだ分かりません。多分前神寺迄行くのにお昼頃までかかると思います。
作品名:空と海の道の上より Ⅶ 作家名:こあみ