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空と海の道の上より Ⅶ

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 北条市大浦、大きなタンカーや小さな船が行き交い、海の感じも土佐の海とは全然違う。土佐の海は、波の音、吹く風、色など全てに厳しさがあり、瀬戸の海はとてもやさしく感じる。どちらも好きだが、やはりやさしいこの海の方が遍路旅には心和む気がする。波の音の代わりに船のエンジンの音を聞きながら歩く。

 五十六番泰山寺に泊めてもらえるかどうか電話。泊めて頂けるとのことにほっとする。久し振りの宿坊。宿坊は嫌でなるだけ民宿に、という人も一緒に歩いた人の中にいましたが、私は宿坊が好きです。
 二日続けての温泉が効いたのか、今日は足の痛みがなく楽に歩ける。
 九時半、菊間町へ。砥鹿山隧道、またトンネルと思ったら数十メートルの短いトンネル、ほっとする。
 燕の巣があり、まだ少ししか飛べない二羽の子つばめが道に。危ないと思いながら見ていたら、飛び上がったが二羽のうちの一羽がトラックに当り、道に叩きつけられてしまった。可哀想な事をしたと思うがどうすることもできない。暫くはつばめの為にお経を唱える。

 この辺は瓦屋さんが多い。どこかで休みたいと思っていたら道沿いに鬼瓦資料館、ご自由にお入り下さいと書かれている。中に入り見せて頂く。
 いろいろな型の鬼瓦や瓦の焼きもの、四百年前の瓦などもあり、小さな所だけど面白く、小休憩もできた。

 十時二十分、瓦屋さんの多いところを過ぎた左側に港、道を隔てて厄除け大師遍照院というお寺があり、トイレを借りた後お参りする。延命寺十三・七キロの標識。
 十一時、どこかで食事をと思うがなかなか店がなく、肩が痛くなり暫く休憩。歩道で背中や肩を伸ばす。
 十一時半、菊間町種、喫茶店があり、お昼を食べる。店の人が話し好きで、お参りのことなど話し楽しく過ごす。愛媛の人には、歩いてお参りしていることを羨ましがられる。
 長居をして十二時半、店を出ると雨がぱらつき始めた。そのままで歩き始めるが、本格的に降り出し合羽を出す。

 十二時五十分、大西町へ。途中から遍路道を行くが、国道を行ったほうが分かり易いと言われ、今治に入ってからは国道を行く。

 二時半、延命寺着。静かなお寺でお参りの人も少なく、たくさんお経をあげる。
 納経所の人が五十五番南光坊への遍路道を教えてくださり、少し高いところまで一緒に来て送ってくれる。そして、
「天気のよい日にはここから石鎚山が見えるのですよ」と言われるが、今日は天気が悪く何も見えない。
 最初は遍路道、下った後は国道を南光坊へ遍路標識に従って歩く。

 四時五分、着。ここは広いお寺で、ここも私が着いた時あまり人がおらずゆっくり拝める。納経所に行くと団体の人がいたが、先に納経してくれる。

 四時四十五分、今日の泊まりの泰山寺へ、南光坊からまっすぐの遍路道を歩く。車の通らない道でゆっくり歩ける。途中で道を尋ねると、親切に方角と山の目当てを教えてくれたので安心して歩く。

 五時二十分着。山の際、小高いところに細長く山を背にしてお寺がある。
 南光坊からは雨も上がり、合羽を脱ぐ。ズボンは汗でびしょ濡れで歩いていても少し寒い。時間がないので先に納経を済ませゆっくり拝む。六時過ぎ宿坊へ。とてもきれいなところで気持ちが良い。
 洗濯が出来ず、特にズボンは三日もはき困っていたが、洗濯させて下さり乾燥機も使わせてもらえる。その優しい心遣いが嬉しく仏様に、少しばかりのお供えをする。

 照ちゃん(従兄弟)に電話をして、二十四日に泊めてもらえるようお願いをする。
 天気予報によると、すごい雨らしく予定通りに行くかどうか分からないけど、二十四日にはどこにいても迎えに来てくれるとのことに、横峰寺さえ済ませれば予定通りに行かなくても迎えに来てもらい、またそこから歩こうと思っています。

 乾燥機を先に団体の人が使ってなかなかあかないので、待っている間にこれを書いています。愛媛ではなかなか宿坊に泊まれず、まだ二か寺だけです。が、泊まったところはどちらも親切です。
 何か甘い物が食べたいとお饅頭屋さんに目がいくのですが、一個や二個買うわけにいかず横目で通っていたら、昨日女の人に話しかけられ、その方が、
「今は主人が病気で出られないが、一人になったらお遍路に出たい、貴方はいいですね」と暫く一緒に歩いて、別れる時、
「頂きものですけど」とプリンを二個下さった。昨日一個食べ、お蔭で甘いものへの欲求もちょっと納まりました。
 お接待はいつも有難く思っていますが、特に欲しいものが頂けた時は、お大師様が下さっているような気がして余計有難く思われます。お金は全部別にのけていますが、品物は有難く頂いています。

 明日も雨のようなので、洗濯物が乾き本当に助かります。今日は大師堂の横の部屋で泊まっています。お大師様のそばにいるようで嬉しいです。

五月二十二日 午後十時半
今治五十六番泰山寺宿坊にて


 五月二十三日(火)雨のち晴れ
 
昨日の天気予報で大雨の注意が出ていたので、雨を覚悟。本堂でお勤めの後、七十八才の御住職が今でも歩いてお参りする話を聞かせて下さる。

出る前お寺の方に道を尋ね、五十七番~五十九番迄の道順と方向を教えて頂く。横峰寺へのアドバイスもしてくれる。
七時十五分出発。朝食の時、前に若い男の人と横にご夫婦が座っていて、この人たちも歩きらしく一緒になる。
五十七番、栄福寺への道は畑の畔道を通り蒼社川を渡る。標識に従って右に、最後はまた遍路道を通り八時着。ここまで四人縦に並んで歩く。私が先頭に、若い男の人は足を痛めていて、痛そうに足を引き摺りながら歩く。
 
 お寺では私が一番長く時間がかかるので、次の仙遊寺へ三人は先に出発。ご夫婦は札幌から来た方で長いところは乗物に、あとは出来るだけ歩いてのお参り。若い人に聞いたところでは、針の先生で病院務めを定年になり、お参りとのこと、越さんといわれます。 

 ご主人は、
「六十九才です」と、何度もおっしゃり、奥さんに、
「そんなに年のことを言わなくても」と言われている。とても元気でおもしろい人です。若い人(この人は九州から来た角さんといわれる)と越さんは昨日出会い、半日一緒で、足を痛めた為あまり歩けず、寺に泊まるよう進められ一緒に泊まったらしい。
 昨夜針を打ってもらったので、今日はだいぶん楽だといわれる。

 八時半、五十七番発。雨は降っているが小降りで助かる。
 仙遊寺迄は山道の上りでみかん畑の中を歩く。上のほうで三人休憩しているのが見える。
 合羽を着ての上りなので汗びっしょり。見晴らしの良い、今来た道を眺める。お天気だとこの辺で座って休憩するのだが、今日は仕方がないので歩き続ける。上り、かなりきつく疲れる。
 九時、車の道と別れ旧参道へ。途中お大師様のお加治水があり頂く。汗をかいて上ってきたのでとてもおいしい。ここで角さんに追いつく。この参道もかなり急で、九時二十分ふうふういいながら到着。汗をかいたのでだんだん寒くなる。

 仙遊寺の納経所で番号を調べて頂き、今日の泊まる予定の正善寺に電話するが、出ない。
 角さんに、
作品名:空と海の道の上より Ⅶ 作家名:こあみ