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端数報告5

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無線はともかく、電話に詳しい者なんか別に要るわけないんだけど。これに『「最終報告」真犯人』から金翼哲=森本哲司とその連れであるキツネ目を足し、これだけはエンデンブシの創作である曾根達夫を加えると映画のメンバーということになるが明らかに多過ぎ。吉高弘行がいるなら曾根達夫は要らないだろうし、青酸ソーダの山下なんて、もっと必要に思えない。それは当時に簡単に手に入る薬品だったのであり、青木・上東・吉高以外はほとんどなんにもしてないに等しく、これで分け前が同じとしたらおかしい。
 
やたら増やすからこうなるのだ。でもってさらに『闇に消えた怪人』には、
 
画像:闇に消えた怪人252-253ページ
画像:闇に消えた怪人表紙
 
こんなことが書いてある。政治家などに黒幕の候補。ね、〈阿久津〉が暴くのは、全部この本から引っ張ってきた話だとわかるでしょう。
 
てわけで、エンデンブシが大学時代に読んだというのはこれに違いない。
《たまたま手にとった「グリ森」関連の本を読んで》
というのはちょうどこの本が文庫化されて手に取りやすくなった頃とおぼしい。だから文庫で手に取ったんじゃないかな。
 
そして話をほぼ丸々に信じ込んだのだと思うが、しかし見せたページのうち、赤で囲ったところを戻って見てほしい。
《さらに、不思議なことには、一連の事件現場周辺には、必ずと言っていいほど公衆電話があった。》
とある。何が不思議なんだ! まだ携帯電話なんかないその頃、公衆電話は人が住んでいるところどこにだってあるだろうが! この本が出た'96年だって、まだケータイは全然普及してないぞ!
 
まったくもう……とにかくエンデンブシがこの本をネタにしてるのに疑いはなく、そこから、
「声を使われた子供が大人になって気づいたら」
というアイデアを思いついたのであろう。それはいいとして、またそこから、
 
   *
 
 なにより、犯人は子どもの人生を狂わせてしまった。本書でも書きましたが、“声”を犯行に使われた子は、もしかすると今もそのことを隠しながら生きているかもしれない。つまり犯人は、子どもの未来を奪っているのです。
 
画像:小冊子表紙
 
という考えを持った。ふうん、なるほど。とは思うがさてどんなもんか。
 
それはたんにエンデンブシという人間が「そう思う」というだけだろう。「もしかすると」なんだろう。可能性は認めるにしても、どの程度の見込みがあるか。
 
ほとんどゼロに等しいんじゃないの? 『罪の声』ではそのプロローグに、
 
画像:罪の声プロローグふたつの声
アフェリエイト:罪の声
 
こうあるように、一本のテープに当人が歌う声と問題の声が一緒に収められているため自分の声とわかるわけだが、そんなことでもない限り聴いても気づきようがないだろ。
 
そしてそんなのまず有り得ない。無理のある話としか言いようがなく、【偶然に知る】見込みは実際は皆無じゃないのか。
 
では故意に誰かが「お前が声の主だ」と教える場合はどうか。それならまあ、あるかもしれんが、でもだからって、そんな、ねえ。
 
まあ世の中、再三書いてきたように、子供を亡くした親などに近づき、
「ワタシには、霊界にいるアナタのお子さんの声が聞けます。名前はM子ちゃんですね」
なんてなことをやるやつはいる。そんなやつなら『罪の声』が描くようなことをやりかねない。それは認めるとしてもねえ。
 
そういうのは本物のサイコパスだから、
「空疎な国を見せつけて、何か変わりましたか? 犯罪という形で社会に一矢報いて、何が残りましたか。日本はあなたの望む国になったんですか」
とか、
「俺の声が犯罪に使われることに抵抗はなかったの。伯父さん達は、青酸ソーダを入れたお菓子をバラ撒いた。許されることやと思うた?」
とか言われてもなんとも感じないだろうし、さらに、
 
   *
 
阿久津「青木組に捕まって娘は死にました! 息子は、35年間、地を這うような人生を送りました。あなたが、子供達の未来を壊したんです、あなたが! そんなものは、正義じゃない」
 
画像:小栗旬空疎な国を見せつけて
 
とか、はたまた、
 
   *
 
俊也「それが、お母さんの望みやったん? そんとき、俺のことは考えた? お父さんのことは? 俺は、このテープを見つけて、苦しんだね。今だって苦しいで。これから先も、俺が、お母さんやない俺が! この声の罪を背負っていくことになるんやで。それがほんまに、お母さんの望みやったん?」
 
画像:星野源おれの声が犯罪に
 
とか言われてもなんとも感じないだろう。おれも感じない。人の心がないからでなく、これは、
【原作にないセリフを監督と役者の要求に合わせて長々と書き足しただけのもんだ】
とわかるからだが、星野さんよお、これがあんたの望みやったん? こんとき、おれのことは考えた? おれは、こんなもん聞かされて、苦しんだね。今だって苦しいで。こんなものは映画じゃない。ミソ汁で顔を洗って出直してほしいわ。
 
と言いたいが、それはともかく、《使われた子どもは3人いて》だ。おれの考えが正しければエンデンブシの最初の構想では、それは、
【小学2年の男子と女子、それに小学1年の男子】
だった見込みがあることになる。しかしこれはちょっと変で、森永の脅迫ではひとつの声しか使われていない。どうも〈彼ら〉の中の書き手は間違いをしていたらしく、後から、
 
画像:すまなんだの文 アフェリエイト:闇に消えた怪人表紙
 
と書いた手紙を寄越している。
 
小栗旬は映画の中で、
「ギン萬事件で使われた声は3つ」
と言い、映画はこれを繰り返す。使われた子供は3人だ、3人だ、と言うけれど、実際のグリ森事件においてそれは正しくない。
 
【声は3つ】
というのは警察が公開した声が3つということであり、前に書いたように公開されたが無視されている4つ目の録音として、例の、
「21面相、こちら玉三郎」
というやつがあり、さらに録音されたけれども非公開のものがいくつかと、〈彼ら〉はテープを使ったけれど受け手が録音してないために残せていないものがある。
 
ややこしいけど、まあともかく、【子供の声】とされてきたのは3つでなく4つだ。ここは〈彼ら〉が手紙に書いたのをとりあえず信じるとすれば、
 
 
1.7月6日の丸大への指示の声。〈彼ら〉によれば小1男子。
 
2.9月18日の森永への指示の声。〈彼ら〉によれば小2男子。
 
3.11月14日のハウスへの指示の声。〈彼ら〉によれば小2女子。
 
4.翌年1月29日のハウスへの指示の声。〈男子〉とされるが《すずきくんには すまなんだ》の後のもので〈彼ら〉は明かしていない。
 
 
である。お気づきだろうか、『罪の声』では、
 
画像:罪の声プロローグこれは、自分の声だ。
アフェリエイト:罪の声
 
このように、ホープ=ハウス食品の脅迫で使われた声を聴いて曽根俊也は、
《これは、自分の声だ。》
と思うが、グリ森事件の〈彼ら〉はこれを、
《小学2年の 女のこや》
と書いているのである。「ん?」と思って聴き直すと、なるほど、そう思って聴くと女の子のようでもある。
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之