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端数報告5

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そういう話が好きな人の間でそういう話になっている。しかしおそらく、おれが思うに、そういう話が好きな人の間でそういう話になってるだけじゃないのかな。カネというのは使って初めて意味があるものなのであって、隠匿しては必要になる時が来ても使えないだろう。後で脱税だのなんだのいう話になって困るだけだ。
 
高校生がバイトするのもバイクとか、あるいは、
 
画像:ミノルタの一眼レフ
 
こんなものとかを買うためバイトするのであって、貯金するためにバイトする高校生はいないだろ。今におれがこんなもん持っていてもしょうがないのに捨てられなくて押し入れに仕舞ってるのとわけが違うと思うんだがな。
 
けれどもこれが専門家の言うことだから正しいものということにされる。わかりますよね。わかりますよね。トレンチコートはメッセージです。コロナの感染が拡大すると〈波〉が来るのです。わかりますよね。専門家が言うことだから。危機が。時間が。早く。誰かが。立ち上がってと専門家が言ってるのです。わかりますよね。感染者数が増えたらそれはこのように、
 
画像:ディープインパクトの津波1 アフェリエイト:ディープインパクト
 
途轍もなく巨大な〈波〉が来て何百万も死ぬことの証拠。感染者数が減ったらそれもこのように、
 
画像:ディープインパクトの津波2 アフェリエイト:ディープインパクト
 
超々巨大な津波によって何千万も死ぬことの証拠。専門家がそう言うのです。今はコロナの発生以来、危険が最最最大限に高まっている状況なのです。わかりますよね。わかりますよね。決してこの20ヵ月ばかりの間、毎日毎日感染者数に関係なくおんなじことを言ってるわけでは決してなくて、日々のデータを専門家がちゃんと見たうえで言ってるのです。
 
なんてことをテレビは言う。メッセージを受け取ってわかった気になっちゃった者は、
 
画像:2199ユキ先生1
https://comic.webnewtype.com/contents/yamato2199/
 
このように、オウム信者か〈エホバの証人〉の訪問員のお姉さんみたいな顔になってしまって、
「わかりますよね」
と言うようになる。高校生は本当ならばバイトしてバイクを買ってるはずの2年間だったわけだが、
 
画像:2199ユキ先生2
 
こんな調子のナルシストに言って通じるわけもない。ミスグリ加藤譲の横で、
 
画像:川内康範の文
 
こんなことを自分に酔った調子で言う〈愛の戦士〉気取りの答が返ってくるだけだとわかる。だから、
 
 
   「いつか世の中に復讐してやる」
 
 
と考えて自分を慰める他に、できることは今はない。
 
まあ近いうち、専門家の言葉を信じた人間は皆、
 
画像:2199ユキ先生3
 
こうなる時が来る。このマンガのお姉さんは責めに対して、ここにあるように、
 
「記憶にございません」
 
だとか言った後、
 
「言ったことをわたしは忘れたわけじゃないわ。過去を捨てたのよ」
 
かなんか言って宇宙の旅に出ることになるが、現実社会でそういうことが果たして許されるものか。
 
世が許したとしてあなたは許すか。もしあなたが今に高校二年なら? あるいは家族に自殺されたり、飲食店を営んでたりする者だったら。
 
どうするだろう。50年後に誰かを誘拐するだろうか。そうして何かのメッセージを残すだろうか。怨恨説の極めつけはトレンチコート。メッセージだ、メッセージだと専門家が力説するから警察もそれを真に受け捜査したようだが、しかし結局、
 
   「戦前のもの」
 
   画像:コートは戦前のもの
 
という以外何もわからなかったらしい。NHK『未解決事件』を見る限りじゃね。〈かい人21面相〉の一味はおそらく事件当時30代、つまり、
 
   「戦後の生まれ」
 
だとみられているのにどうして〈彼ら〉が生まれていない戦中に事件のヒントがあることになるのか。
 
なんてなことをメッセージを受け取っちゃった人に言うだけ無駄な話で、重いコンダラどこまでも。事件のヒントは戦中にある! 警察とグリコの内部に仲間がいる! そんな話をまるまる信じた人間によって、
 
アフェリエイト:レディ・ジョーカー
 
こんな小説が書かれたりする。しかしいちばん悪いのは、
 
 
   画像:ミスグリ加藤ちょっとでも肉付けしたいという思いで
 
 
やっぱりこの男じゃないか、というところでああやっと前回の続きだ。前置きがまたまた長くなってしまったが、ええとこないだは盗聴の話をしたとこで終わったんだよな。
 
『キツネ目』の本にはそれが、前にスキャンして見せた通り、
《警察発表を待つことなく、記者たちが脅迫状の内容を把握できたのは、パトカーの警察官が、本部への報告のため警察無線でその全文を読み上げていたことによる。当時の警察はアナログ無線だったため簡単に盗聴ができ、警察担当の新聞記者や放送記者たちは、警察無線の盗聴を日課としていた。彼らはこの脅迫状の全文をリアルタイムで聞いていて、朝刊の締め切り間際に、記者クラブの各ブースから競うように出稿していたのである》
こう書いてある。NHK『未解決事件』を見ると大阪府警本部のビルにこのように、
 
画像:大阪府警本部ビル ボックスが並ぶ廊下1 2
 
マスコミ各社の〈ボックス〉とやらが並ぶ区画が設けられ、内部はこのように、
 
画像:ボックス内部1 2
 
なってるらしい。これはもちろん再現されたセットであり、三面の棚はそれぞれ下に車輪が付いてるなどして、動かすとカメラを置く空間が現れるようになってるのだろう。
 
見たとこ四畳半ほどしかない。こんなところに5人が詰まってタバコを吸い、
 
   「あー、空気わる」
 
と言いながら記事を書いてた。
 
そこにグリコの社長誘拐事件発生だ。しかし通報は夜9時半で、最初のパトカーが到着したのも10時過ぎ。兵庫県警が動き出すのが11時頃として、大阪府警本部に詰めるマスコミ各社が嗅ぎ付けるのはさらにその後ということになる。そのタイミングで朝刊にいかにして記事を間に合わせるか。
 
新聞も読まないあたしでもそれが容易でないのは容易にわかる。ましてこのとき、現場の江崎宅前では、詰めかけた記者団と警察の間で、
 
  *
 
記者団「どうなってんですか!」「他の家族は無事なんですか!!」
 
刑事「ただいま調査中」
 
記者団「ああ?」「銃は本物やったんですか!」
 
刑事「いま調べてます」
 
記者団「なんか説明してくださいよ!!!」
 
刑事「これで終わり」
 
記者団「おいっ!!」「ちょちょちょちょちょっと待ってくださいよ!!!」「こらあ――っ!!!!」「ちょっとおっ!!!!!」「なんもわかんないじゃないですか―――っ!!!!!!」「教えろおお――――っっ!!!!!!!」
 
画像:当日の江崎家前
 
という具合であったらしい。どう考えても刑事が正しく、教えろ教えろと怒鳴り狂うマスゴミどもの方がおかしい。記者に話せることなんかまだなんにもなくて当たり前なのだ。
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之