小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

端数報告5

INDEX|40ページ/61ページ|

次のページ前のページ
 

当たり前だ。普段ニュースを見ていたって、どこでどいつがインサイダーで捕まったとか、どこの会社が不正な取引していたという話がよくあるじゃないか。何を言ってるか、聞いてもサッパリではあるけどさ。グリ森みたいな事件があれば、当然、より厳重なチェックが入るに決まっている。その眼を掠めて株価操作で何億も儲けるなんていうのができるもんなのか、株についてわからなくてもおそろしく難しいのがわからんでどうする。
 
アフェリエイト:スーパーカブ
 
と〈スーパーカブ〉のライダー、小熊なんとかちゃんも言っているとかいないとか。それに大体、6億円を9億に増やして3億円の儲けとか、60億を90億に増やして30億の儲けとかいう話だくらいはおれの頭でもなんとかわかる。つまり6億や60億のカネを出してくれるスポンサーが必要で、永田町にでも人脈がなければ、という話だくらいはおれの頭でもわかるんだけどいくら政治家が悪いと言っても。もし仮にそんな話に乗るような黒幕さんがいたとしても、グリコの後で「ヤバ過ぎ」と考え手を引きそうなもんじゃねえか?
 
そうだろう。映画版でも松重豊演じる男は「永田町か!」のセリフの後で、
 
  * 
 
水島「もしそうやったら、出資した人間もまさか歴史に残る大事件になるとは思わんかったやろ。掘ったところで口ひらくやつはおらんやろうな」
 
画像:松重豊
 
と言葉を続けるのだが、そりゃそう、と言うより、グリコの後で手を引いて森永の株の売り買いにはカネを出さない。まさかこんなおおごとになると思っていなかったから――ということになりそうなものでは?
 
と〈スーパーカブ〉のライダー、小熊なんとかちゃんも言っているとかいないとか。スポンサーが降りてしまっては犯人達は計画をやめるか、結局直接企業からカネを脅し取るしかない、という話になるのでないか。
 
ねえ。だからまるっきり、株価操作は現実味がないというのがわかるでしょう。これを理解するのに株の知識は必要ないということに、おれの頭で考えればなるわけです。そしてまたもうひとつ、森永の株がグリコ以上に下落したのはヒューマン・ファクターによるところが大きいと前回に書いた話を繰り返したい。
 
とくに森永の副社長・高木貞男についてだ。前回この人が菓子業界でつるし上げになり、
「そうそうたるメンバーが20人くらい集まりましてね、正直言うと、ずいぶん叩かれたんです。言うならば、あんたがいい格好してるから、みんな迷惑してるよって」
ということになったという話をスキャンで見せました。高木副社長は、
「でも私、ひとりで頑張ったんです。いや、みなさん、何と仰っても裏取引はいけません。犯人逮捕以外にこの事件を解決する道はありません。そう言い続けたんですね」
と言ってるという話を『キツネ目』の本からスキャンして見せました。
 
で、ここからはどこに書いてあったわけでもない完全なおれの想像なのだけれども、世の中には〈株主総会〉というものがあるんだろう。いや、おれは株についてはまったくサッパリわからないのでカブヌシソーカイというものがどんななのか知らぬしわからないのだけれど、あるんだよな。そういうもんが。あるということだけは知ってる。
 
だから、森永にもあるんじゃないの。そのカブトムシスモーカイが。だから高木貞男は、そこでも当時つるし上げになってたというのはないんだろうか。
 
20人くらいの〈大株主〉とかいうものに囲まれて、
 
「高木君。君がいい格好してるから、みんな迷惑してるよ」
 
と言われてた、ということはないんだろうか。会社というのは、株主を儲けさすのが務めだろう。それが株式会社だろう。我々に損をさせてどうするんだよ。
 
と言われてた、ということはないんだろうか。対して高木副社長は、
「いや、みなさん、何と仰っても裏取引はいけません。犯人逮捕以外にこの事件を解決する道はありません」
「そんなの、ぼくらの知ることじゃないよ。君がドブに捨ててるカネは、ぼくらのカネだよ。どうしてくれんの」
と言われてた、ということはないんだろうか。
 
 
   グリ森事件で森永の大株主は億単位の損をしている。
 
 
はずだな。たぶん。おれは頭が悪いので株の話はてんでわからんが、そんな理屈になるはずだということには思い至る。エンデンブシはそんなこと考えたこともないと思うが。
 
おれは思い至るのだ。裏取引すればいいのだ。犯人一味と警察を間に入れずに取引すればそれで終わり。
 
ならば払ってしまえ、と、株主ならば言うのでないのか。そもそも最初にそうしておけば、こんなことにならずに済んだ。高木よ、お前、なんでぼくらにひとことの相談もなく勝手にあーゆーことを決めたの。
 
ということになるのでないか。高木はその圧力にどこまで耐えられるだろうか。
 
実際、ロッテは偽者に一度はカネを払っている。そこでやめときゃ完全に成功なのにそこが偽者のニセモノなところだ。警察を間に入れなければ現金の受け渡しが成功するのは、このケースが証明している。
 
ロッテがこのとき払ったのは、カブヌシソーカイでオーカブヌシから、
「脅迫が来たら警察に言わずにサッサと払っちまえ」
と言われていたため、ということはないのだろうか。
 
ね。てわけで、だからヒューマン・ファクターなのだ。だから高木が、
 
   *
 
「違う! 断じて違う! 宇宙は母なのだ。そこで生まれた生命は、すべて平等でなければならない。それが宇宙の真理であり、宇宙の愛だ。お前は間違っている。それは宇宙の自由と平和を消してしまうものなのだ。俺達は戦う。断固として戦う!」
 
画像:指差す古代進 アフェリエイト:さらば宇宙戦艦ヤマト
 
こんなような人間でなければ、グリ森事件の犯人達は森永から1億か2億まんまと奪れていたのじゃないか。だから『罪の声』の小説と映画が、
 
   *
 
事件当時の曽根達夫「現金での受け渡しはどないしたって成功しません!」
 
画像:曽根達夫
 
というのは、
 
「違う! 断じて違う! 現金は可能なのだ。株価操作こそ百万円かそこらならともかく、それ以上はどないしたって成功せんわい、ボケが! お前は間違っている。それはアンチヒーローの夢を消してしまうものなんや。わしは戦う。断固として戦う!」
 
とおれは言うことにする者である――と、いったところで株と言ったら話は変わるが、なんや〈オミクロン株〉とかゆーんで、近頃えろう騒がしいな。
 
 
 
「オミクロン株! ああ今度こそ、今度こそ、日本で千万、世界で十億を殺してくれる変異体なのに違いありません。だから言ったでしょう、言ったでしょう。コロナは史上最大の〈禍〉なのであると。バンザーイ! バンザーイ!!」
 
 
 
とテレビでしゃべるやつらが、うるさくってしょうがない。でもあれだろ。どうせまた2週間の命じゃないのか。今年はずっと一年間、その繰り返しだったじゃないか。
 
1月の20日頃に〈ダイカン株〉とかいうのが変異で現れたとか言って、
「今度こそ一千万と十億が!」
とテレビがわめく。けど2月のアタマ頃に〈セツブン株〉というのが出たとか言って、
作品名:端数報告5 作家名:島田信之