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萬堂の後のようにすら見せようとしている。ちゃんと描くと辻褄が合わなくなってしまうからだ。この件で〈彼ら〉はマスコミに手紙を送らず、社会を劇場にしなかった。警察も秘匿に成功していたため世に知られることがなかった。だから丸大食品の株価が下がることもなかった。
 
のだけど、それがエンデンブシはわかってなかった。
《わるでも ええ かい人21面相の ように なって くれたら》
これは〈彼ら〉の文の中でもかなり有名なものであり、エンデンブシも知らないはずがないのだけど、【書かれたのが11月】というのは勘違いされやすいだろう。
 
【7月に書かれたもの】と思われやすい。事件を半端に知るとそうなり、エンデンブシも錯覚していた。犯人どものことだから、〈天国と地獄作戦〉の後ですぐ書きマスコミに送りつけたものと思い込んだのではないか。グリコに続いてまた社会が劇場になり、丸大の株が下がっていた。ハムやソーセージに毒を入れるとこまでしなかったので、グリコや森永ほどの打撃にならず済んだが……。
 
なんてなふうにひとりで決めて疑いすらしなかった。のではないかな。そうだろう。これはだいたいそんなところだ。そうでなければ【萬堂を油断させるため】なんていうおかしなことを書いた説明がつかないし、ハウス、いや、ホープの株でも〈空売り〉とやらをやったとすることの説明にならない。
 
《少なくとも、ギンガと萬堂では大量の空売りを仕掛けているはずで》
なんてことをこの本は書く。そのちょい前に、
《最低でも十億はいけるって話でしたから》
とも書く。10億どころか20億も30億も稼いでそのほとんどが、
 
   *
 
阿久津「中央?」
変なもったいつけ男「飯田橋からだと、有楽町線で南へ3駅」
水島「永田町か!」
 
画像:国会議事堂
 
ここにいる黒幕の許に流れているに違いない、ということに小説も映画の方もなっている。グリコで10億、丸大とハウスで5億、そして森永で15億。
 
合わせて30億くらい株価操作で儲けられるのだ、という話であるように読めるが、しかしどうやらこの考えは、おれが見るとこ『闇に消えた怪人』て本の、
 
画像:闇に消えた怪人140-141ページ
画像:闇に消えた怪人表紙
 
このページに着想を得ているのではないかと思う。これか、これに似たものにだ。
 
と言ってもおれはここで大事な告白をしなければならんが、実はとっても頭が悪い人間である。おれは頭良くないねん。どころか、すごく悪いねん。とても頭が悪いので、ここに書いてあることがチンプンカンプンでわからない。わからないから間違ってるかもしれないが、上のピンクで囲ったところに、
 
《例えば、六百五十円の森永株を百万株空売りし、四百五十円で買い戻したとすれば、二億円の儲けになる(実際は証券会社に手数料を払うから純益はもう少し低くなる)。》
 
とあるのがあなたはおわかりになりますか。
 
おれはわかるがわからない。頭が悪いからわからんのだが、読む限りでは、森永で空売りというのをやれば2億円に少し足りない儲けになる。そしておそらくそのくらいが限度という意味に取れる。おれは頭が悪いから間違ってるかもしれませんが。
 
そして空売りとやらができるのは、グリコと森永だけなんだろう。グリコで1億、森永で2億。合計3億が頑張ってもいいところなのではないか。
 
というように思うのだ。頭の悪いおれが「思う」というだけで、ちゃんとわかって書いてるわけでないのを重ねてお断りしておきますが。
 
『罪の声』のマンガ版には再三見せたように、
 
画像:罪の声マンガ版2空売りですよ アフェリエイト:罪の声2
 
こんなおっさんが出てくる。原作小説にはこれの続きとわかるものが、
 
画像:罪の声88-89ページ
アフェリエイト:罪の声
 
こう書かれ、グリ森事件で空売りをやれば、
《まぁ、派手に仕掛けてりゃ、何億かにはなったんじゃないですか》
という話になるらしいとわかる。どうにか。いや本当は、まるでわかってないけどどうにか。でもかろうじてわかるけれども、【何億か】ってのは、3億円くらいの額を言ってんじゃないのか?
 
エンデンブシはそれを勝手にケタを増やして30億円稼げることにしてんじゃないのか? という疑いをおれは感じずられないのだが、たぶんあなたはおれよりずっと頭が良くて株の話がよくおわかりになるでしょう。その頭でどうお考えになりますか。
 
少なくともマンガのおっさん、「最低でも十億」などとは言ってないみたいじゃんよう――と、何度も言うように、おれはまるきり株の話はわからないのでわかりません。ましてやスキャンで見せた『闇に消えた怪人』の本の、黄緑で囲った、
《ベテラン捜査員》
の話はカケラもわかりません。でもねえ、オレンジで囲ったところ。森永の株は、
《少々動いても目立たない》
とあるだろ。少々。少々なんだろ。1億とか、10億とかの話じゃないのんちゃいまんのか。
 
【少々】ってのは具体的にいくらなんだよ。少々のためにあんなことを……とおれはまず言いたいが、それより、グレーで囲ったところだ。ユーカショーケンルイのドーコーを調べる捜査は難航したとか言って、
《それがなあ。各証券会社とも顧客の秘密厳守とか言って、差し障りのない話しかせんのや。ろくな資料も出さんし、あれじゃ、捜査令状を出しても、何も出て来んやろ。そりゃ証券会社にとって、顧客情報の漏洩は致命的かも知れんが、もう少し捜査に協力してくれてもなあ……》
なんて書いててこれはわりかしわかるけれども、しかしまるで逆のことが『キツネ目』の本に、
 
画像:キツネ目274-275ページ
アフェリエイト:キツネ目
 
こうある。これが正しくて、『闇に消えた怪人』の〈黄緑〉〈グレー〉〈オレンジ〉の捜査員達は金槌しか持たないためにすべてが釘に見えてしまうソーサインズだと見るべきじゃないか。自分だけが事件を解決できる者ということにしたいから専門知識をペラペラとツバを飛ばしてまくしたてる。何時間でも何時間でも。やがて自分が近づくと人は逃げてくようになる。何かモゴモゴ言い訳しながらどっかに行ってしまったりするようなことになるのだけれど、そこで、
 
「誰も話を聞かず、オレに協力してくれない」
 
と言うようになる。
 
「オレが真相に迫っているのを誰か気づいた者がいる。そして妨害をかけてきたのでは」
 
なんてことを言うようになる。
 
そんなところに『闇に消えた怪人』の著者が「よろしければお話を」と言って寄ってきたもんだから、喜んじゃって溜まり溜まったものを吐き出しただけなんじゃあないの。
 
あのページに書いてあること全部が全部。あれに限らずグリ森事件ソーサインの話はみんな、そういうもんとしかおれには思えん。
 
そうだろ。しかし、『キツネ目』のこの記述は違うと思う。企業や証券会社はどうか知らないが、ショーケントリヒキジョは本当に徹底的に、空売りとやらで少しでも稼いだやつがいれば調べ、グリ森キミドリやグリ森オレンジよりはマトモな捜査員に伝えていたと見るべきじゃないか。
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之