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端数報告5

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今年に出たこの本はそれらの説を退けているだけマシなのである。ただし、書いてきたように、最初の〈10億プラス金塊〉を本気で要求してたとしている。勝久氏が30時間、水防倉庫の中に留まっていたならばそれをまんまと手にしているか捕まっているかのどちらかだと考えている。何しろ最初の段階では〈彼ら〉がどんな者達なのか警察にもまったくわからず、それまで日本になかった犯罪だけに成功していた見込みがあるとさえ考えているらしい。
 
でもって再三書いたように、
《恐怖心を担保に取》り、《マインドコントロール下でカネを払わせる》
計画だった、なんてことを言っている。この点でおれに言わせれば、もうやっぱりダメなんである。100キロの金塊は3億円になるそうだが、だから合計13億円を〈キツネ目一味〉は目標にし、きっと奪れると考えていた。キョーフシンをタンポに取ればだ。この著者は本気でそう考えていて、これまで見せてきたように本の中で力説し、繰り返して述べている。
 
 
「じゃあ次の〈6千万〉とか、その次の〈1億2千万〉とか、さらにその次の〈2億4千万プラスCM料6千万〉なんていうのはなんなんだよ」
 
 
なんてなことをこの著者に言っても無駄だ。聞く耳持たない。それは前に見せたように、
《わしらの CM ようきくで》
を削ってなかったことにしたうえで、
《お門違いの妥協案》
ということにしているのでも明らかだろう。おれが〈彼ら〉は一円の利も得ていないと見るのに対してこの著者は、目標の13億円か、それに近い額をまんまと手にしているに違いないと考えている。それは、
 
画像:キツネ目287-289ページ
アフェリエイト:キツネ目
 
こう書かれているのだが、ねえ。ともかくもそのような考え方なのがわかるでしょう。どうやら例の〈元警察庁幹部〉氏が、
「いまにして思えば、もっと可能性の視野を広げて捜査しておくべきだった」
なんて言って企業から安全にカネを脅し取れる方法を考え、『キツネ目』の著者が、
 
「この人の言うことなら間違いない!」
 
と叫んで飛びついたみたいなのだが、しかしおれが見るところ、その方法は「比較的安全に」脅し取れるというだけで、「絶対安全」というわけでない。奪れる金額は数百万がせいぜいで、頑張っても一千万というところ。それ以上に無理すれば失敗する方法なのだ。
 
おれが見るところ、〈元警察庁幹部〉氏は、
「何千万かは得ているかもしれない」
という考えであって、決して、
「目標の13億を」
なんて言ってるわけじゃないんじゃないか、と読んで思うのだが、『キツネ目』の著者はそうは考えてない。
 
「絶対安全、確実に、目標の13億を奪れる方法なのだ」
 
と決めつけてしまっている。おれにはまるきりバカげた考えとしか思えんのだが。
 
その方法で13億を得ようとしたら、だからカ○ビーから一千万、ナビ○コから一千万、ペヤ○グから一千万、味○素から一千万、永○園から一千万、キュ○ピーから一千万……といった具合に130の企業に脅迫状を送り、一社から一千万ずつせしめて合計13億円、ということになると思うが、無理だろ、そんなの。仮に何社かはうまくいっても、中には後で、
 
「ウチの会社にもそういう脅迫状が来たが払わなかった」
 
と言う企業が出そうなもんだし、警察に、
 
「こんな手紙が来たのですけどどうしましょう」
 
と届け出る企業だってあるだろう。としかおれが見るところ、思えないような方法なのだ。五つの会社から一千万ずつ奪って5千万という話ならひょっとするといけるかもしれんが、そのくらいが限界じゃねえの。〈元警察庁幹部〉氏もそのつもりで話してんじゃねえの、という。同じ脅迫をロッテも受けてよさそうなもんだし、だから後で偽物に騙されるのもありえなくなる。
 
のじゃないですか。というわけで、『キツネ目』の著者の考えは、てんでバカげてるとしか言いようがない。可能性の視野をあまりに広げるのは、〈オッカムの剃刀〉というものである。おれの考えはあくまでも、
 
「〈彼ら〉は一円も手にしていない」
 
だが、それについての詳しい話はまたいずれ。今日はここまでにしておきましょう。それではまた。
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之