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端数報告5

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「NHK取材班が新たに掴んだ信用度の高い情報! それが看過されていた!」
 
ということにしようとしている。番組の再現ドラマでも、
 
画像:水平二連の銃1 2
 
この通り、水平二連の銃を登場させているが、とても〈短身〉というものではないですね。だけではなくて、狭い車内でこんなふうに使うのに適した感じでもない気しません? 〈彼ら〉は他に拳銃も持ってたはずだが、ここではどうしてこんなものを使ったと言うのか。
 
水平二連の銃は他に比べて本物らしく見え、さらに凶悪な感じにも見える。人を脅すにはよくもあろう。だが長いし、日本では狩猟用や射的用として合法的に所持が許される銃であっても買えばそれきりというわけにはいかず、何年かおきに提出して審査を受け直さねばならない。違反があれば免許取り消しで高い罰金を払わされる。だから、
 
画像:ターミネーター1 2 アフェリエイト:ターミネーター
 
こんなふうに台尻を切断してコートの下に隠すなんてできぬし、6月だ。〈合法的な猟銃〉の見込みは、おれは0.4%もないと思うがどうだろうか。
 
しかし〈マッドマックスの銃〉か、似たようなトイガンならばそれらの問題はない。金槌しか持っていないとすべてが釘に見えると言う。切手係は1ドル切手がすべてを解き明かす鍵だと思う。銃は本物と決めつけた刑事は銃は本物と決めつけてしまう。マスコミは新しい話が出ると出るたび飛びついて、
「その線を追えば犯人を捕まえられた」
ということにすぐしてしまう。ろくに検証することなしにだ。『キツネ目』の本にはこの〈アベック襲撃〉の話が、
 
画像:キツネ目41-42ページ
アフェリエイト:キツネ目
 
こう書かれている。元自衛隊員はかなりの抵抗をし、〈彼ら〉のひとりは堤防から転げ落とされたりした、と。NHK『未解決事件』の再現ドラマでも、
 
画像:転がる男
 
ひとりが土手を転がるカットがあるが、この番組の制作にかかわった者が書いてるはずの本にはこれが、
 
画像:捜査員300人の証言96-97ページ
アフェリエイト:捜査員300人の証言
 
こう書かれている。
《一瞬の出来事だったと言う》
と。抵抗はまったくしてないことになってしまっているのだ。銃が本物であるならば威嚇のためにダーンと撃ったり、彼女に突きつけ「こいつを殺すぞ」なんてやったりしてよさそうだが、その必要がなかったことにするために事実を曲げているとしか思えん。
 
細かく読み比べてみるに、元自衛隊員は最初だけ開いた窓から銃を突っ込まれ手で掴みもしているようだが、外に出て殴り倒された後はナイフで脅されている、というのが実際のところらしい。車内でばかでっかい銃を突きつけられたように描かれる、
 
画像:車内で銃
 
これはドラマの脚色なのだ。銃はオモチャと見るのがやはり妥当なのではないか。
 
にもかかわらず再現ドラマの撮影現場で、
 
「すっげえ。でかい。重い。長い。これ本物なんですか」
 
「うん。借りるの苦労したよ。なんでも熊とか突進してくる猪を撃つための銃なんだって。一発でダメなときには二発目でダーン」
 
「そういう銃なんですか!」
 
「完全な狩猟用だし、こういうのはオモチャではない。だから調べれば突き止められると言った刑事がいたんだけど、どういうわけか捜査会議で……」
 
なんて言ったりしたんかしら。かもなあ。とまあそういうわけで、こんな調子でこの本は、
「可能性があったと今でも思っている」
とか、
「特定の意図があったのではと今でも思う」
といった話で埋め尽くされてNHKの人間がいちいち頷いちゃってるという。でもってやっぱり、
 
画像:吉山利嗣
 
ドラマでは池内博之が演じたこの男がこんなことを言っているのもあらためて活字にしている。だが一方で、
 
画像:捜査員300人の証言274-275ページ
アフェリエイト:捜査員300人の証言
 
こうも書いてる。おれに言わせりゃこれこそ本当の話なんだが当時の一般の人々はグリ森事件が未解決に終わったことで閉塞感など感じていない。まったく逆で、社会に風穴開けてくれたヒーローとむしろとらえている。だから捕まってほしくない。謎の存在のままいてほしいし、今もどこかでバカなやつらをあざ笑っていてくれてほしいとすら願っている。
 
少なくともおれはそうだし、あの事件の話を聞くたびなんとなくそう思ってきた。〈バカ〉とはつまり、NHKの報道部にいるようなやつらだ。毎日新聞の記者やなんかだ。こいつらはバカなりにそれがわかるから、世間の下流一般市民が自分達をそう見てるのが気に入らない。だから世の人々の考え方を間違いとし、
 
「我々の報道が世間を違う方向に導いてしまった結果ではないかと思うこともないわけではない。ただ、あれだけ世間を騒がした事件で、しかもお菓子に毒を入れたって犯人が言ったでしょ。嘘だと思っていても、もし本当だったら大変なことだよ。国民の安全を脅かす情報を報道しないという選択肢は……」
 
なんてなことを勉強はできる頭でこね出して言う。
 
けれども、嘘だ。人間の皮を被ったヒルがヒルの論理でものをしゃべっているだけのことだ。『捜査員300人の証言』は腐り切ったマスコミが書いた腐れ本以外のなんでもない。あらゆるページが腐り切ってる。おれは前に、
 
画像:グリ森事件本4冊
 
この4冊の中で『キツネ目』がいちばんマシで、他はどれもカスだと書いた。今回は、それがどういうことかを書いて終えることにしよう。
 
まあ要するに『キツネ目』以外は、従来の説で書かれている。怨恨でありグリコの内部犯行であり、警察にも仲間がいて、株式操作でも儲けていて、ひとりは被差別部落の出。ヤクザもいるし、さらにバックに北朝鮮がついている。日本を恐怖のズンドコに突き落とそうともくろんだ金日成の陰謀だったのかもしれない……というような調子。
 
これに自分が掴んだという〈新事実〉をのっけて「ホラ見ろ」と言う。「やっぱりこれまで言われていたことが正しかったのです。これが最終報告だ!」
 
というような内容だ。特に何しろ3冊とも、
 
アフェリエイト:不肖・宮嶋金正日を狙え!
 
こいつの時代に入ってから書かれたものであるだけに北朝鮮スパイ説が炸裂である。もちろん、
 
画像:溝呂木大祐プロフィール 未解決事件の戦後史表紙
 
こいつも、それをほとんど信じ込んじゃっているらしい。
 
アフェリエイト:レディ・ジョーカー
 
高村薫のこの本も再三書いてきたようにおれは読んでないけれど、聞く話ではやっぱりそういう感じらしいし、デビュー作の『黄金を抱いて跳べ』っていうのが、いしいひさいちに、
 
画像:黄金を抱いて跳べん コミカルミステリーツアー2表紙
 
こんなふうにツッコまれてたもんだもんなあ。それに比べて、
 
アフェリエイト:キツネ目
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之