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端数報告5

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という方向に話を持っていこうとしている。それが今にNHKが世に見せたいストーリー。『未解決事件』の番組でも、ナレーターが、
 
   *
 
「回を重ねるごとに、犯人は饒舌さを増していった。警察を嘲笑い、挑発する内容。一方、企業へ送りつけた脅迫状では、犯人は凶悪さを剥き出しにしていた」
 
画像:番組タイトル
 
と語り、さらにこんなものを見せて、
 
画像:えんさんのふろにつけて殺したる 社長は殺されるんや
 
〈彼ら〉を平気で人を殺せる極悪人に見せようとしていた。こんなことを書くくらいだから、人の命をなんとも思っていないのは明らかだ、と。おれから見ればこんなもの、何億円も脅し取ろうというのだからこれくらい書いて当然だし、さして本気で書いてるとすら思えんのだが。再三書いてきたようにこんなのはジャブかフェイントのための文句と見るべきじゃないのか。
 
黙殺されて当然の文で、ポツダム宣言を受諾さすには実力行使しかない。ピカドン。おれが本気でやるとしたら、前に書いたように放火して、
 
「今度は人がいるところに火をつけてやる。お前のせいでお前が雇っているもんが死ぬんや」
 
とでもやるだろう。グリコで成功した後で、次に森永をやるのであれば森永にだけ、
「グリコとは6億で話をつけた」
なんて書かない。失敗したからそんなことをやってたわけで、おれから見れば〈彼ら〉は決して本当のワルにはなりきれぬ者達だったのだ。
 
だからそこが好きなんだけどね。おれはジョーカーは嫌いだし、マスコミとなるともっと嫌いだ。『捜査員300人の証言』には、さっき見せた次のページに〈彼ら〉が極悪人であり自分達マスコミの見方が正しい証拠として、
 
画像:捜査員300人の証言78-79ページ 
画像:捜査員300人の証言表紙
 
こんなことが書いてある。おわかりだろう、
「嘘だと思っていても、もし本当だったら大変なことだよ」
と言った次の瞬間に、
「本当だったに違いない。グリコは知っていたから裏取引を……」
ということにしている。書いてるほどに《世間に伝えられた挑戦状のイメージとはほど遠い》ことなど別にありはしない、ただ辛辣というだけのものを、何百倍も凶悪なように見せようとしている。番組の主張と同じだが、この本にせよあの番組の方にせよ、当時を知らない人間が見ればおそらくほとんどが、地下鉄サリンなんかと混同したりして、何百・何千という人が毒入り菓子を食べて死んだと錯覚してしまうだろう。そのように誘導している。書いてる人間の悪さで言えば4冊の中でダントツに悪い。さすが天下のNHK。
 
――が、ところでお気づきだろうか。この手紙は前回ここで『キツネ目』からおれが見せたのと同じものだ。そして赤で囲ったところに注目してもらいたい。
 
《わしらの CM ようきくで》
 
と書いてあるが、これ読んで、おれは「あれ?」と思ってしまった。変だな、こんなの、文にあったか。こないだ検証したばっかだから覚えているけど憶えがないぞ。こんなの書いてあったかなあ。
 
そう思って前回に出したものを見直すと、
 
画像:岩瀬達哉キツネ目102-103ページ
アフェリエイト:キツネ目
 
ああっ、
《(略)》
となっている! これじゃ憶えがあるはずがない! なんやねんこりゃ。どういうこっちゃい!
 
って、どうもこうもねえよなあ。「わしらのCMようきくで」。これを読んだら、なんだかまるで、グリコのいい宣伝になるようなことを〈彼ら〉が考えているかに見える。
 
「いるかに見える」というだけだが、いるかに見えるのは重要だ。何しろ、いるかに見えちゃうんだからな。だが『キツネ目』の著者はこいつを犯人グループの焦りの表れとしたいのだ。自分だけにそれが読めるということにしたいし、《お門違いの妥協案》なのだということにしたい。
 
それには、
「わしらのCMようきくで」
は都合が悪いから、削って元からなかったことにしたわけだ。やつらがグリコの宣伝になることほんとに考えてるわけがない――そう決めつけて疑わないから、自分がやることを正当化できる。
 
――が、どうだろう。もし前回におれがここに書いた考えが正しいのなら? 裏取引に成功したら、実はもともと、
 
   画像:グリコの看板を見上げる上川
 
この看板を世界的に有名にするためのイタズラだったのを世に明かす。すると、
「なあんだ」
ということになって、グリコの製品がよく売れる。
 
それが〈彼ら〉の考えであり、
「わしらのCMようきくで」
はその伏線だったとすれば? そう見たならば確かに誰もがたわごとと見なして終わりで、おれが今に目を留めるまで現にそうなってきたのだろうこの一文に説明をつけられないだろうか。〈彼ら〉は決してお門違いなことを書いたわけではないことにならぬか。
 
そしておれの〈プロレス説〉が正しい見込みがまた高まったと言えないだろうか――と、言ったところで今回はおしまい。なんだけれども次からどうすっかなあ。またまた最初に戻って一から書いていくしかないんだろうけど。
 
どういうものになるか全然わかりませんが、まあ楽しみにしていてください。
 

作品名:端数報告5 作家名:島田信之