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画像:鈴木邦芳
 
この男、鈴木邦芳。元から自治体警察や一般人を信じる心を持たない男。自分は警察の人間でなく警察庁の人間なのだと考えている。〈国家〉に属する人間なのだと考えている。とすれば東京から長官だの次長だのがやって来て、
「鈴木、頼むぞ」「とにかく頼むぞ」
と言えばそいつは、
「府警の中の21(ブラック・ジャック)を見つけろ」
という意味になる。そして極めつけはコートで、“わかってるな”のメッセージなのだ。事件のヒントは戦前にあると見ることもできる。
 
そう力説する者がいる。江崎グリコは〈七三一部隊〉と関係していたのじゃないか。
 
帝銀事件で使われた毒は利一が開発したのじゃないか。
 
というわけでふたつの事件が、なんとなんとつながってしまった。ゴシップ屋にものをしゃべらすと、すぐこういうことになる。証拠は充分でしょう。証拠は充分でしょう。わかってくださいよ。ということになり、
 
   *
 
記者A「(警察は)グリコに関係する人間を、相当洗っとるようです。事件解決も近いな」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
ということになってしまう。実際にこのとき警察は事件をグリコの内部犯行と考えて、それに絞った捜査をしていた。鈴木邦芳がそうさせていた。が、違うだろう。受け渡しの場所に犯人が現れず、人質の自力脱出で終わってしまった事件では、犯人の目星のつけようがなかった。53年テープだの、黄巾族だのグリコ青年学校だのといったマスコミがほじくり返す怪しげな話に鈴木がいちいち飛びついて、刑事を部屋に呼びつける。うどんなんか食ってるところを呼ばれた刑事は、
「イタズラじゃあないんですか」
と言いながら、タイレル・コーポレーションへと出かけていく。この会社には何かあるって? バカバカしい。イタズラだイタズラ。
 
五里霧中の捜査をやらされる者達は、実はみんなそう思っていた。刑事部長はエイリアンだ。血の通った人間じゃない。サッチョウから去年来て、4年でまたサッチョウに戻る。それ以上いて人間らしい感情が生まれちまうと面倒だから、その前に。ってのが〈国家〉というものに属するもんの考えなんだろ。
 
そんな連中に何がわかるか。そう思っていた。実は皆が。4月10日の放火が起きてしまうまでは――。
 
と、いったところで今回はおしまい。警察内部の軋轢をドラマチックに描く小説でおもしろいのが何かないかとお求めの方には、例によっておれが書いた、
 
画像:クラップ・ゲーム・フェノミナン表紙
https://books.rakuten.co.jp/rk/c4c936f145e636b5b3a9d0fee0752ce7/?l-id=item-c-seriesitem
 
これをお勧めするのですが、もちろん今はこのリンクを押してもページにたどり着けません。始めの5分の1ほどのみ、小説投稿サイト〈ノベリスト〉で公開している、
 
https://novelist.jp/88870.html
 
このリンクから読むことができます。それから、
 
画像:図書館の本を濡らしたら(と6つの短篇)表紙
https://books.rakuten.co.jp/rk/c0ece09decea3050b225c2ac729aa740/?l-id=search-c-item-img-01
 
これが50部売れてくれれば、印税が一万円になってくれて上の黒いのをまた売り出せるようになるはずなんですけどね。今のとこ、これを読むのはみんながみんな、おれから盗める気でいるんだろう。甘い夢見てな。
 
作品名:端数報告5 作家名:島田信之