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端数報告5

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AKライフルを一万挺も買うんだろうか。その場合、札の全部を写真に撮ったり薬品を塗っても意味ないだろう。〈日本円〉として外国のローグに使われるだけのことだ。〈彼ら〉は一挺50万円でAKを売って50億儲ける。それだけのことだ。
 
取引場所を30人の刑事で囲い込んだとしても、十挺のAKでダダダとやられるだけだ。そういうことも考えろよ。5千万円の多重債務に困ったやつが5千万を借金の返済に充てたならば番号と薬品でアシがつくこともあるだろうけど、明らかに、これはそういう事件じゃないだろ。なのに、一体、何やってんだ。何も考えずマニュアル通りをセッセとやって、
「よろしく頼むぞ」
「はい!」
と言い合う体育会系のノリだけで、プロフェッショナルでスペシャリストでエキスパートの集団の気でいる。
 
としか見えない。バカどもが。お前ら全員アマチュア以下だ。税金泥棒。と見ていて思う。これはもちろん再現ドラマでどこまで事実通りなのかわからんし、実際にはウィキにあったように刑事らの中には「どうもおかしい」と話してた者もいたのだろうけど、とにかく番組のこのシーンでいちばんダメと思うのが前回も見せた、
 
画像:札をカメラで撮る刑事達
 
これだ。札を15枚ずつ、丁寧に丁寧に並べて撮ってる。こういう卓をいくつも並べて、20か30人がかりで。
 
バカじゃねえのか? 6667枚の印画紙の山を作る気なのか。これがプロの仕事の気なのか。〈PROFESSIONAL〉と書いたカメラならおれも一台持っている。
 
画像:マミヤC220
 
持ってるだけだが、こんなものも持ってるおれがハッキリと言ってやろう。それじゃ番号は撮れねーよ。アマチュア。トーシロ。税金泥棒。おれも前に図書館のトイレに新聞の縮刷版を持ち込みカメラで撮ったとき、やむなくこういうやり方をしたが、後で拡大して見たときに半分くらい文字がボケてた。そうなるのがわかっていたから必ず3枚ずつ撮って、最も鮮明に写ってるのを選ぶようにしていた。
 
画像:新聞の縮刷版
 
それがエキスパート、とまではいかなくても写真の撮り方を知ってる人間のやり方だ。今のデジタルカメラだからそんなやり方もできたけれど、これが昔の24×36ミリの画面サイズを持つカメラで、より広い面積を一度に収めようとすると、遙かに難しい撮影になる。6667枚の印画紙を後で見たとき、番号がちゃんと読み取れるのは、十万枚の札のうちまず一割もないだろう。
 
とハッキリ言える。フラッシュでブレは防げても、カメラにちょっとでも角度がついたり、体が上下に動いただけでピントは外れてしまうのだ。札の番号を写すような撮影を手持ちでやってはならない。まして、パイプ椅子の上に立って撮るなどもってのほか。
 
画像:三脚 レリーズケーブル
 
このようにガッシリとした三脚を卓の中心に乗っけてだな、カメラを垂直に下に向ける。でもってこのレリーズケーブルというものを付けてフィルムの交換以外カメラに触らずに、不用意にピントが動かないようにしておく。
 
でもって札を並べてパチパチ撮っていけばいいだろう。それが早くて確実だ。番号が読めりゃいいならこのように、
 
画像:千円札
 
番号部分だけを重ねて撮ればいい。カメラを三脚に据えて正しく垂直にすれば、少しくらい札が浮いても文字がボヤけることはない。ひとつのコマに百枚写せてキャビネか大キャビネ(13×18センチ)の印画紙に焼いて読むことができるだろう。
 
画像:大キャビネ印画紙
 
つまり千枚。この箱が4つあればいいことになる。白黒で撮って自分で焼けば当時は費用も安くついた。この箱ひとつが確か5千か6千円だったな。フィルムは27本で、感材だけなら全部で3万も要らんだろう。
 
たとえ十億。十万枚の札であっても――というのがエキスパート、とまではいかなくても写真の撮り方を知ってる人間の意見であり、NHK『未解決事件』のあれはダメだ。何もかもが。しかし鈴木邦芳は、それがまったく見てわからずに「よろしく頼むぞ」と言っていた。
 
取引現場に犯人が来なかったのを「不可解」と言ってる。どうしようもねえ。おれが〈彼ら〉でも行かねえよ。で、不可解なもんだから、『けいさつにも』を見てハッとして、
「そうか、警察に仲間がいるのか!」
と言い出してしまうわけだ。自分に都合のいい理屈に逃げてるだけなんだけど、アマチュア以下の人間だからそこに気づくことがない。かくして、
「これは本当に、警察の中に仲間がいる」
ということになってしまう。
 
鈴木邦芳というキャリア官僚の都合によって決まるのだ。警察に仲間がいるならグリコの内部に仲間がいるのもまた確実ということになり、『電電公社にも』の6文字は見ても網膜に結像されない。
 
そんな〈ワクチン〉が脳に生まれて仕事を果たすようになるのだ。大阪でマクドナルドは「マクド」である。鈴木邦芳はエイリアンだ。降りしきるブラック・レインに打たれて周囲が見えなくなり、グリコのネオン看板がキリストの磔刑像のように浮かぶ。たたりだ。これは怨恨なのだ。脅迫状には警察にも会社にも仲間がいると書いてあった。証拠は充分でしょう。証拠は充分でしょう。わかってくださいよ。
 
そういうことを、
 
 
   画像:加藤譲ちょっとでも肉付けしたいという思いで
 
 
こういうやつが言って迫ってくるもんだから、つい言ってしまう、
「あー、全くわかりませんがぁ、その線もぉ、捨てられないということですよね? どれも推定の範囲を出ませんがぁ、その線もぉ、捨てるわけにはいかんというゴニョゴニョゴニョ……」
と。グリコはタイレル・コーポレーション。〈彼ら〉はネクサス6であり、だから内部に入り込んで社長に近づこうとする。
 
だから警察にも仲間がいる。デッカードもレプリカントだ。グリコの過去に一体何があると言うのか。
 
江崎利一は生前どんな悪いことをやって会社を大きくしたのか。
 
「極めつけはコートです。証拠はもう充分でしょう。“わかってるな”のメッセージです。事件のヒントは戦中にあると見ることもできます。と小田切氏が力説しています」
 
と前回ここで見せた『未解決事件の戦後史』の本にミゾロギなんとかが書いていた。またこの本で放火について書かれた部分をスキャンして見せると、
 
画像:未解決事件の戦後史198-199ページ
画像:未解決事件の戦後史表紙
 
こう。読むと放火の後で、
《犯人らしき人物から「思い知ったやろ」という電話が入る》
とここには書いてある。
 
おや、というところだろう。おれはこれまでこのブログで、
「放火は報道に刺激を受けた無関係なアカウマの仕業じゃないか」
と書いてきた。しかし、これが事実なら、このおれの考えに疑いを持たねばならぬことになる。
 
うん。それは認めよう。それにこれが警察に「同一犯によるもの」と断定された根拠なのかもしれない。鈴木邦芳と、
 
画像:四方修いやそんなのないよ
 
こいつがこの一事をもってそう決め、
「だから兵庫の事件やのうて全部大阪の事件なんや」
作品名:端数報告5 作家名:島田信之