天才少女の巡り合わせ
おばあちゃんの場合は、やむ負えないという状況もあって、三年前の事件では起訴はされたが、結局無罪となった。和田は実際に奥さんを殺しているし、旦那への死体遺棄などと重ね合わせて、懲役七年の実刑であった。さすがに初版でもないし、執行猶予というわけにはいかなかった。
和田が獄中にいる間、おばあちゃんは亡くなった。ちょうど刑の執行が始まって二年が経った頃だった。ちょうどその時、おばあちゃんの遺書が見つかったようだ。おばあちゃんは病死だったのだが、その遺書には、自分のかつての行いと、和田に対しての恩義が書かれていた。
和田は模範囚として五年で釈放され。その時初めておばあちゃんの遺書を目の当たりにすることになったのだが、おばあちゃんの遺書には、すべて悪いのは自分であると書かれていた。和田という男は誤解されやすいが、本当に優しい青年で、彼のことを武彦に、よろしく頼むとしたためであった。さらに武彦と綾子の行く末を見届けられないのが、一番の寂しさであるとも書いている。
「これから死へと旅立つこの身で、一番の心残りは、和田さんの人生と、武彦君と綾子ちゃんの行く末を見守ること、私にできなかったことを、これから託したい相手、それは綾子ちゃんなのよ」
と書かれていた……。
( 完 )
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作品名:天才少女の巡り合わせ 作家名:森本晃次