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Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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「うん、やっぱり明日よね」
 部屋で一人、手記のようなものを読んでいた女性は、そう呟くと、パタンと手記の記された本を閉じ、机に戻した。
 女性の背には、リリー達のものとはまた違い、蝶の翅ような形状の翅が生えている。
 明るい紫色のウェーブがかかった髪は、肩にかからない程度に切り揃えられており、そこから生える一対の触角は、緩やかに後ろへと向かっている。
 背に広がる翅は、深みのある美しい紫色をしていた。
「クザンとリリーの息子か……どんな子かしら」
 呟くその口元は、楽しみで仕方ないのか、終始弛みっぱなしだ。
 アーモンド型に緩やかなカーブを描く目元は、柔らかな紫色の睫毛に彩られている。
 その中で瞬く瞳もまた、宝石のように美しい紫だった。
「妖精の子だし、クザン似って事は、ツリ目でやんちゃな感じかしらね」
 ふふっと小さく笑うと、細められた目はそれでも目尻側が上がっていて、どこか悪戯っぽい表情に見える。
「時差があるから、向こうを朝に出たとして、こっちに着くのはお昼くらいかな」
 彼女は、独り言を続けながら、その部屋……以前誰かの書斎だったような、今はそこら中が埃を被っている、そんな部屋を後にする。
「ふふっ。楽しみだわ」
 そんな言葉を残して、彼女が扉を閉める。

 後には、扉の衝撃で舞い上がった埃だけが、誰もいない部屋で静かに踊っていた。