小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚

INDEX|21ページ/39ページ|

次のページ前のページ
 


 屋敷の裏庭では、両腕と足を縛られたコートの男が、それを重くもなさそうに小脇に抱えてきたフードの少年によって、地へ転がされたところだった。
 少年は、無表情のままその手を振り上げる。
「ま、待て!!」
 焦りを浮かべる男へ、少年はその手を振り下ろした。
「俺は何も喋ってな……!!」
 ヒュッと風切り音が聞こえた時には、男を縛っていた縄は切られていた。
「あ……」
 言葉を失う男に、少年はなるべく低い声で告げる。
「分かってる。二度とこんなヘマするな」
「あ、ああ!」
 コートの男は、どこか怯えた様子で逃げるように駆け去った。

 ローブの少年は先程のことを思い返す。
 二人の会話は、ハッキリ聞こえていた。
 あの時、コートの男は、黒髪の青年にすっかりのまれていた。
 こんな小物の口、あの青年なら簡単に割れただろう。
 何故、すぐそうしなかったのか。
 あの青年はこう言っていた。
『私が一人になったのは、これから貴方に対して行う事を、あの二人に見られたくなかったからです』
 それがもし本当だとしても、あんなに離れる必要があるだろうか。

 少年は、あの青年が張った障壁をもう一度思い浮かべる。
 確かに、あれと似た術式をどこかでみたような気がする。
 けれど、それがどうしても思い出せない。

(……あの男は、一体何者なんだ……)

 少年は、フードの下で赤い瞳を伏せると、苦々しく眉をしかめた。