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Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 瓦解した住宅の、瓦礫の中に、久居は倒れていた。
 赤い血が服のあちこちに滲み、服が吸いきれなかった鮮血が、手を伝い指先からポタポタと零れ落ちる。
 顔の左半分にも浅い傷が大きく入っており、左眼は開きづらそうにしている。
 左腕は動かないのか、久居は右腕だけで、なんとか体を起こした。
「人間にしちゃ頑丈だな」
 ぽつりと零された言葉に、久居は思う。
(……やはり、この男は人間ではないのですね……)
 左腕から少しでも血を逃さぬよう、久居は右手の平で左腕の傷口を押さえつける。
「安心しろ、最後くらい楽に死なせてやるよ」
 そう言って、少年は手の内に炎を生んだ。
(あれは鬼火!?)
 久居は、その炎に見覚えがあった。
(彼は、鬼ですか!!)

 炎は大きく膨れ上がると、激しい熱気を撒いて久居へ飛びかかる。
「くっ」
 久居は歯を食いしばり、右手を伸ばして障壁を張った。
 手の平から、円を描くように広がった輪が、瞬時に盾となる。

「へぇ、障壁まで張れるとは器用な奴だ」
 ローブの少年が、感心するように、そして憐れむように呟いた。
「ま、そんな薄い壁じゃ、到底防げねぇけどな」
 久居の障壁は、見る間に炎に焼かれ、燃え尽きようとしている。

 ローブの少年は、その障壁の術式を、どこかで見た事がある気がした。
 しかし、それを確かめる間も無く、薄く広がる盾は消滅する。

 圧倒的な炎の波が、久居を押し流した。