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Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 ずるずると、男は久居に首の後ろを掴まれ引き摺られていた。
「お前一人でどうするつもりだ」
 両腕、両膝、両足首を縛られてはいたが、男は自由な口を開いた。
「アジトには、敵が大勢待ち構えてるかも知れないぜ?」
 男の言葉に久居が表情を変えないまま答える。
「……拠点の場所をすんなり教えてくださるんですか?」
「ハッ、バカにするな。言える事と言えない事の区別くらいつく」
「そうですよね」
 久居は、わざと冷酷な表情を作って、ゆっくりと、低く、告げる。
 これで答えてくれれば、手間が省けるというものだ。
「私が一人になったのは、これから貴方に対して行う事を、あの二人に見られたくなかったからです……」
 男は、ぞくりと震えあがった。
「い、や、待て! お、教えないとは言ってない!!」
「そうなのですか?」
 久居はほんの少しの期待を持って尋ねる。
「だから、そのっ、知らないんだ!」
 男は縛られた両腕をバタバタと振って説明した。
「教えようにも、下っ端には教えない事になってて……」
「ええ、そうでしょうね。あの人数ですから、緘口令の徹底は難しいでしょう」
「だ、だろ!?」
 男が、同意をもらって一瞬ホッとするような顔を見せる。
「だからこそ、貴方に聞いているのですよ」
 久居に冷たく告げられて、男はぴたりと動きを止めた。
 その顔色が、夜闇にも分かるほど青ざめてゆく。
「貴方が、この現場の責任者でしょう?」
 ジッと、逃れようのない視線に囚われて、男は怯えたように肩を揺らした。

(とにかく、リルの耳にこの男の声が届かない距離までいかなくてはいけませんね……)
 久居はすっかり大人しくなった男を、また引き摺って歩きだす。
 口に布を詰め込んだとしても、まだこの距離ではリルの耳に届いてしまうだろう。
 もう少しだけ、念のために距離を取りたい。そう思う久居を、ローブにフードを被った少年が、近くの屋根から今度は気配を絶って見張っていた。

(俺は手を出さない契約だったが……、これ以上の傍観は不味いな)
 フードの少年は、小さく舌打ちすると、ひらりと地上へ舞い下りる。
(これだから人間は役に立たねぇんだよ!)

 久居は、不意に現れた存在に、男を手放し構えた。
「そいつを、こちらに渡してもらおうか」
 リルと同じ程度の背丈をしたローブ姿の少年が、なるべく低い声で凄む。
「……お断りするとしたら?」
 久居は相手の出方を探ろうとした。
 しかし、フードの少年はローブから出した手を、久居に向けて開いた。
「選択権は無い。お前にはここで死んでもらう」