Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚
一方、山ではフリーが、とうとう力尽きていた。
あまりの疲労に足がもつれて、その場に膝をつく。
日はもう、とっぷりと暮れようとしていた。
「見つからないねー……」
呟くリルに「う、うん……」とだけなんとか返事をしつつ、フリーは心で叫ぶ。
(いい加減諦めようよ!!!!)
弟は自分より小柄だったし、瞬発力も今ひとつだけれど、持久力だとか体力だけはとにかく無尽蔵にあると感じる。
鬼である父の血を濃く継いでいるからだろうか。
妖精に近いフリーには、到底付き合いきれそうになかった。
自分の浅はかさを呪いつつ、なんとか切り出す。
「……日も暮れるし……そろそろ帰ろう?」
声をかけられて振り返ったリルは、フリーが草の上に寝転んでいるのを見て理解する。
「うん、そうだね。フリーも限界みたいだし」
もう動けない……と半べその姉に、リルは手を差し伸べる。
「なんていうか……フリーって体力ないよね」
姉の両手を引っ張り上げて、なんとか立たせつつリルがこぼす。
「あんたがありすぎなの!!」
残り僅かな力を振り絞って、フリーは叫んだ。
作品名:Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚 作家名:弓屋 晶都