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Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 その日はぽかぽかとした春の陽気が一日続いた。
 麗らかな太陽が、ゆっくりと傾き、夕日が足元に影を長く伸ばしはじめる。
 馬車はガラガラと軽快な音を立てながら、夕暮れの道を進んでいた。

 馬車の物見戸から外を眺めていた菰野が、ぽつりと呟いた。
「今朝とは違う道だな……」
 少し距離を置いて座る従者が、静かに答える。
「山側は危険ですので」
 従者は決意を新たにしていた。
 今朝のような危機的状況(遅刻寸前)であっても、もう菰野様をあの山には……。
 菰野様のお母様を奪った山には近付かせまい、と。

「……そうか」
 菰野はそんな従者の決意を背に、言葉を飲み込む。
 あの山に何かがいたかも知れないなんて、この心配性の従者に言えば、余計に心配をかけてしまうだろう。
 今日の事は黙っておこうと、菰野は決めて口をつぐんだ。