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Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 窓の外をチラチラ見ていたフリーが、布を手に、やおら立ち上がる。
「お母さーん。私、散歩してくるねー」
 声をかけられ、リリーが振り返った。
「はいはい。気を付けてね」
「明日はビーズ買いに行こうねっ」
 リルも気付いて、玄関に向かうフリーをリリーと共に見送る。
「行ってきまーすっ」
「あんまり遅くならないようにね」
 ウキウキと楽しそうなその背に、リルも「いってらっしゃーい」と声をかけた。

(いつも、あの布持って行くなぁ……)
 と、リルが窓から遠ざかるフリーの背を眺めていると、リリーが声をかける。
「リルも行くんでしょ?」
「うん、もうちょっとしたら出るー」
 問われて、少年は笑顔で答えた。
 そんなリルを、母はじっと見る。
 リルはフリーと同じように、生き生きと瞳を輝かせていた。
「そして、毎回フリーよりちょっと早く帰ってくるのよね……」
「フ、フリーには内緒だよっ?」
 慌てる様子のリルに、リリーは細い眉を少しだけ寄せると、苦笑を浮かべて答えた。
「はいはい……。危ないことしないのよ?」
「はーいっ」

 素直に答えるリルには『危ないこと』など微塵もするつもりがない。
 それを感じ取って、リリーは何とも言えない気持ちになった。