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Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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「その前に、あっちに落ちてるカゴ拾ってきてくれる?」
「うんっ」
 タッと駆け出す弟の後ろ姿に、さっきの少年の後ろ姿が重なった。
 フリーはもう一度、足に巻かれた帯に触れる。
(さっきの男の子、私と同じくらいの歳かな……)
 リルよりずっと頼もしく男らしかったその少年を思い返していると、あの時唇に触れた少年の体温がじわりと蘇る。
 途端に真っ赤になる顔をバタバタ手で扇ぎながら必死で冷ましていると、リルが「拾ったよー」とカゴを持ってきた。
「何してるの?」
 リルに聞かれて、フリーは慌てて答える。
「何でもないわよっ。ほら、帰るわよ、肩貸しなさいよっ」
 リルは「はーい」と素直に答えて、自分より背の高い姉をヨイショと支えた。
「何でフリーはこんな遠くにいたの?」
「えーとねー、隠れる場所を探してたら、偶然カゴを見つけてー……」
 リルの質問に適当に答えながら、フリーは、チラリと振り返る。

(また……、会えるかな……)

 僅かに頬を染め、再会を願うその横顔は、今まで少女が誰にも見せたことのない表情だった。