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狐鬼 第二章

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背後の木木達が葉擦れの音を奏でる 午後

少年は別れの挨拶をしているのか
大きく手を振り 其の後ろ姿を見送っている

葉擦れの音に混じり 微かな笑い声が響く
甲高く 如何してか濁る声

『 恋愛ごっこは御免だぜー 』

と、揶揄(からか)った夏の日が懐かしい反面、疎ましい


全ては運命で
全ては役割がある

誰も彼も
逃げる事も出来ないし
逃れる術も知らない


事、此処に至る迄(まで)
「離れ家の娘」の 役割を勘定に入れずにいた
馬鹿さ加減に苦汁を嘗(な)める 第三眼は薄薄、気が付いている


誰も彼も
其れが役割とも知らずに
其処に足を踏み入れる瞬間

全てが運命で
全てが役割になる


当然、第三眼の心を汲む
少年が嘲笑するように唇を歪めて 其の目を伏せる

落ち落ち感傷にも浸れん、と ばかり
気を取り直す 第三眼の下衆な笑声を風が運ぶ

「 白狐(きつね)の話に乗るのか? 」

一蓮托生とはいえ
一心同体ではない故、苦言を呈したい思いもあるが
我ながら 今更感は否めない

精精、出来るのは尻拭いのみ と、いう考えに行き着く
第三眼の患(わずら)い等、露知らず

万歳するように気持ち良く 伸びをする

其れは 解放感なのか
其れは 開放感なのか

少年が 細(こま)やかに笑う

「何が心配なの?」

何もかもだ、と 声を大にしたいが
強(し)いて言うのなら此の取引自体、気に入らない

然(そ)う 気に入らない

貧乏 籤(くじ)を引く所か 藪蛇だ
「神狐」程、食えない奴はいない

明明白白

以前の「神狐」然(しか)り
以後の「神狐」然(しか)り

返事すら呉(く)れず、だんまりを決め込む
第三眼を気にする風もなく 少年が独り言(ご)ちる

「「願い」の白紙は もういいよ」

「奪われた「珠」を 取り返してやる」
「奪い去った 彼(あ)の「神狐(きつね)」を始末してやる」

然うして、くつくつ破顔(わら)う
少年は お喋(しゃべ)りが止まらない

「彼(あ)の「神狐(きつね)」が「門」を叩くかなあ?」
「彼(あ)の 白狐の為に「門」を叩くかなあ?」

「どうだろ?」

首を傾げて 自問する
少年の様子に第三眼は益益、貝になる

「無邪気」とは 邪気がない事ではない
「無邪気」とは 邪気がなんなのか、理解 出来ない事だ

軈(やが)て
手を打つ 少年が歓喜の声を上げる

「いいよ!」

「それなら 白狐を殺そう!」
「それなら「門」を叩く迄、「神狐(きつね)」を殺そう!」

彼(あ)の「神狐(きつね)」に辿り着く迄、続けていこう

「なんという、名案!」

大人しそうな外見とは掛け離れた
幼ない口調で空恐ろしい言葉を口にする 少年が天を仰いだ

次の瞬間

「 お前は 」
「 自分で 自分の首を絞めるのか〜? 」

棹を差す 訳もなく
水を差す 第三眼の合いの手が入る

木木の葉擦れの音が一層、騒めく

少年は天を仰いで仰いで、上半身を仰け反る
繁繁と広がる 背後の森を見遣る

此の先は「闇」だ

「また、その 御伽噺(おとぎばなし)?」

殆(ほとほと) 聞き飽きた、と ばかり金切り声で笑い飛ばす
少年を余所に 第三眼が何とも言えない顔(目ん玉?)で 吐き捨てる

「 うけけ 」




作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫