小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

狐鬼 第二章

INDEX|2ページ/29ページ|

次のページ前のページ
 

2



何故、此(こ)の場所を選んだのかは分からない

『空と海の境界線』
『水平線の遥(はる)か、ストロボの様な夕日が沈む』

『白白(しらじら)しい』
『白紙の世界』

海に臨(のぞ)む、国道沿い
二階建ての賃貸集合住宅(アパート)に暮らし始めて数週間

夏の観光地は秋の訪(おとず)れに海も街も人影は疎(まば)らだ

真新(まっさら)な砂浜に足を取られながらも海際迄、辿り着く
波 飛沫(しぶき)を巻く潮風が頬を濡らす

其(そ)れ以前に彼女の頬が濡れていたのは気の所為(せい)か

然(そ)うして漂(ただよ)い流れ着いた流木に腰掛け
打ち寄せる波が立てる淡い泡(はな)を何とは無しに眺めていた

背後を談笑交じり通り過ぎる
ウエットスーツに身を包み、小脇にサーフボードを抱えた男性達
其(そ)の内の一人が引き返す也(なり)、声を掛けた

帰路の途中、砂浜へと下りる階段
偶然にも軟派(ナンパ)?現場を目撃した白狐だが
然程、眼中にないのか朗朗(ろうろう)と彼女の名前を呼ぶ

「すずめ」

其(そ)の声に振り返る
其(そ)の様子に男性は彼女から離れて行く

「未(ま)だ、いるのか?」

若干(じゃっかん)、小走りで駆け付けた
彼女の傍(かたわ)ら流木に腰を下ろす白狐が訊(たず)ねる

何(ど)れ程の時間、此処(ここ)にいたのか

自分が行った直(す)ぐ後なのか
自分が戻った本(ほん)の少し前なのか

何(いず)れにせよ、取った手が冷たい

「帰らないか?」

彼女の冷えた左手を温める様に両手で包み込む
白狐の問い掛けに彼女は頷く

頷くも未(いま)だ視線は綿津見(わたつみ)に注がれたままだ

溜息すら出ない
仕方なく彼女の左手 事(ごと)、上着の右 衣嚢(ポケット)に手を突っ込む

此処(ここ)に来てから延延(えんえん)、此(こ)の調子だ
気が付けば砂浜に佇(たたず)んでは「海」を眺めて過ごす日日(ひび)

眺めているのは「海」なのか、「何」なのか

彼(あ)の日
全ての「記憶」を消した彼(あ)の日以前に思いを馳(は)せているのだろうか

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫