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狐鬼 第二章

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「はつね、「ガリ」は(俺には)必要ない」

漸(ようや)く御手洗(トイレ)から出て来た
白狐が其(そ)れは其(そ)れは苦苦しい顔で吐き捨てる

其(そ)の心身ともに草臥(くたび)れた様子に吹き出す
はつねが「ちっちっち」と、律動(リズム)を刻み右手人差し指を振った

「此(こ)の世に必要じゃない「モノ」なんてないのよ?、みやちゃん」

突如(とつじょ)、したり顔で諭(さと)す
はつねに眼(目)が点になるも「成る程、深いな」と、思い至る白狐だが
当然、(俺が)食べない「モノ」は無駄でしかない

再度、虚無顔で「必要ない」と、言い切られれば仕方ないのか
はつねもはつねで立てる人差し指を親指に変えて「了解」と、返事を返した

然(そ)う斯(こ)うする内に木製両開き扉が豪快に開かれる
見れば大事な板(ボード)を抱(だ)き抱えた、くろじが姿を現わした

然(そ)うして不断(ふんだん)に木材を使用した喫茶店(カフェ)の壁に
板(ボード)を立て掛けつつ自分への小言を並べるくろじを一瞥(いちべつ)するも
はつねは意に介(かい)さず白狐に紹介した

「みやちゃん」
「此(こ)れ私の彼氏、宜(よろ)しくね」

悪(あ)し様(ざま)に「此(こ)れ」呼ばわりされた
くろじが「受けて立つぞ!」と、ばかりに顔を向けた、次の瞬間

「御前(おまえ)は・・・、すずめに声を掛けていた輩(やから)」

予期しない外野(白狐)から不意打ちに、くろじ所かはつねの顔も強張(こわば)る
其(そ)の二人の様子に白狐の腕を引く、すずめが耳語(じご)る暇もなく

「?!はあ、あああああああ?!」

店内中に轟(とどろ)く、はつねの怒声に身を縮(ちぢ)めた

「、違う、違ーう!」
「「風邪、引きますよ」って、声掛けただけだよ!、俺!」

即行、くろじは身振り手振りで否定するも

「然(そ)うだ、声を掛けていただけだ」
「何故に其(そ)れ程、狼狽(うろた)える?」

知るや知らずや

素知らぬ顔で宣(のたま)い半眼を呉(く)れる白狐の傍(かたわ)ら
藁(わら)にも縋(すが)る思いですずめを見遣(みや)る

其(そ)の後、「温かい御茶、奢(おご)りますよ~」と、続いたが
多分、否(いや)絶対、案内したのは此(こ)のログハウス喫茶店(カフェ)だろう
今 漸(やっ)と想像が付いたすずめも「うんうん」と、頷(うなず)く

「?!本当?!」

「!!本当!!」

脊髄反射的に即答するくろじをはつねは貫禄(かんろく)十分、眼(がん)付ける

『良く言えば「正直」』
『悪く言えば「馬鹿正直」』

『「嘘」を吐(つ)けない』
『「嘘」を吐(つ)いた所で暴(ば)れ暴(ば)れだが癪(しゃく)に障(さわ)る』

「眼(がん)」を真面(まとも)に受け止める、くろじと睨(にら)み合った末

「・・・、分かった」

下(お)りた審判にくろじもすずめも安堵(あんど)したのも束(つか)の間
目を伏せるはつねの次の言葉に耳を疑う

「罰金、十万ね」

言い渡す也(なり)、カウンターへと踵(きびす)を返すはつねの背中にくろじが叫ぶ

「全然、分かってねえじゃん!」
「其(そ)れに何時(いつ)の約束だよ、罰金十万って!」

振り返るはつねが見事、返り討ちにする

「七年前!」
「未成年の分際(ぶんざい)で御酒吞んで!!」
「サーファー仲間の年上女と朝帰りした時!!!」

はつねにして見れば、「忘れた」とは言わせない
くろじにして見れば、「忘れた」とは言わないが忘れようにも其(そ)の「記憶」がない

「、彼(あ)、彼(あ)れは」

「覚えてないんだよね?」
「覚えてないから「罰金十万」で痛み分けにしたんだよね?」

誠意とは「金」だ
誠意とは鯔(とど)の詰まり「金」だ

許す気もないなら
別れる気もないなら

然(そ)う説得されて納得するしかなかった

当然、年上女は否定した
当然、くろじ自身も否定した

当然、納(おさ)まらないはつねは御節介(おせっかい)此(こ)の上ない
くろじには「救いの手」である、他(た)のサーファー仲間が間を取り持った結果

今回は「罰金十万」
洒落(しゃれ)にならないが今後も無きにしも非(あら)ず、との総意で
「罰金十万」の罰則が設(もう)けられた

熟(つくづく)、俺ってば信用ねえ

然(そ)う思う、くろじだが彼(あ)の時の事を後悔しない日日はない
後悔した所で何(なん)の意味もないが其(そ)れでも後悔しない日日はないんだ

年上女の、付き合っている「男」の相談なんかに乗るんじゃなかった

話せば話す程、深刻になった
吞めば吞む程、親密になった挙句(あげく)、何も覚えていない等(など) 御笑い種だ

我ながら馬鹿だ
馬鹿 也(なり)に考えて以来、酒は止めた

彼(あ)の時の修羅場(しゅらば)に比べれば、とは思うが限界だ

今夜の喧嘩は何時(いつ)もの喧嘩とは明白(あからさま)に違う
「退(ひ)き際(ぎわ)」が分からない自分には精神的も肉体的にも此処(ここ)が限界だ

眠いし腹減ったし・・・、はつねといちゃいちゃしたいし(無理ゲー)

「分かった」
「分かったよ、罰金十万払うよ」

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫