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狐鬼 第二章

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愈愈(いよいよ)、自分達を遠巻きに見遣るすずめを盗み見る

勘(かん)の良いはつねの事だ
常常(つねづね)、自分の「嘘」を見破るはつねの事だ

若(も)しかしたら自分の浅はかな行為(こうい)を勘付(かんづ)いているのかも?
若(も)しかしたら自分の浅はかな行為(こうい)を「目撃」していたのかも知れない

『疚(やま)しい事等ないが』
『疚(やま)しい事だと、はつねに誤解されるのは嫌なので』くろじは覚悟を決める

「はつね!、俺が声を!!(掛けたのは・・・)」

「馬鹿みたい!」
「御客さんは夏場(オンシーズン)にしか来ないのに!」

「御店、潰(つぶ)れたら如何(どう)するのよ?!」

被(かぶ)せるはつねの言葉
其(そ)れは見事にくろじの「地雷(じらい)」を踏(ふ)む

神妙(しんみょう)な「覚悟」等 何処(どこ)へやら

「俺はねえ、はつね」
「俺は「素人(しろうと)」相手に商売はしねえの」

肩を怒(いか)らすくろじが講釈(こうしゃく)を垂(た)れ始める

「「大事」な板、売ってんのよ」
「「大事」にしねえって分かってる奴 等(ら)には売れっこねえのよ」

「ふん?、何で「大事」にしないって分かるのよ?」

問(と)いながらも耳に届いた「物音」に
木製両開き扉に顔を向けるはつねを余所(よそ)にくろじは言い捨てた

「夏に板、買いに来る奴 等(ら)は碌(ろく)なもんじゃねえ」

サーフィンに興味がない、はつねには甚(はなは)だ意味が分からない
唯(ただ)唯(ただ)、くろじの「独断」と「偏見」だ

然(そ)う思うのは
はつねの勝手だが実際、サーフィンの季節(ベストシーズン)は「秋」らしい
九月~十一月迄の三か月間は最適な条件が数多く揃(そろ)う時期なのだ

其(そ)れを理解した上でのくろじの「講釈(こうしゃく)」なのかは怪(あや)しいが

兎(と)にも角(かく)にも言いたい事を言い切ったのか

カウンターテーブルに置かれた
御冷(おひや)を満足げに呷(あお)るくろじを眺めるはつねがにやにやする

「御高説(ごこうせつ)、素晴らしいわあ」

然(そ)うして
屋外(テラス)席を指差すと先程、目撃した光景を嬉嬉(きき)として教えた

「其(そ)の「大事」な板、階段から転がり落ちてったわよお」

間髪(かんはつ)容れず御冷(おひや)の杯(グラス)を搗(か)ち割る勢いで
カウンターテーブルに置くくろじがはつねの指差す先を恐(おそ)る恐(おそ)る見遣る

釣(つ)られたのか
すずめも怖怖(こわごわ)、木製両開き扉に目を向けた
はつねの言葉通りくろじが階段の手摺(てす)りに立て掛けた筈の「板」がない

「風が出て来たみたいねえ!、あっはっは!」

態(わざ)とらしく馬鹿笑うはつねに
くろじが一目散に駆け付ける木製両開き扉を開(ひら)きながら怒鳴(どな)った

「性格悪りぃぞ!、はつね!!」

くろじの言葉に「あかんべえ」と、舌を出すはつねが溜息を吐(つ)いた後
すずめに向き直るや否(いな)や深深(ふかぶか)と頭を下げる

「御免(ごめん)ね、すずめ」
「他人の喧嘩なんか胸糞悪いだけだよね、本当に御免(ごめん)」

「ううん、面白かった」

「、え?」

はらはらしたのも本心だ
だが、ほのぼのしたのも本心だ

すずめ自身、何処(どこ)から目線なのか分からないが
「二人は大丈夫」然(そ)う思えた

其(そ)の気持ちを素直に言葉にした結果
「面白かった」の返事なのだが可也(かなり)の失言なのでは?
気が付いたすずめが慌てて「否(いや)、彼(あ)の、其(そ)の」と、取り繕(つくろ)うが
突然、はつねの手が彼女の媚茶(こびちゃ)色のボブヘアをくしゃくしゃする

「?!すずめえええ?!(笑)」

「!御免(ごめん)!」
「!御免(ごめん)なさい!」

繰り返すもはつねは「攻撃」を止(や)める気はない、らしい
到頭(とうとう)、すずめも笑い出す

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫