第四話 くらしの中で
その7
或る晩、隣の寝室で休んでいた相棒のけたたましい叫び声で目が覚めた。
何が起きたかわからぬままに救急車を呼び、すぐ近くの救急病院へ運ばれた。
その夜は意識は戻らなかったが、二日酔いで眠っているのかそれとも脳の異変で意識が無いのかよくわからないからと言われ、臨時の病室でゴーゴー鼾をかく状態で一夜が明けた。
翌日検査をして脳梗塞だと診断されて、脳外科の病室に移され治療が始まった。
その後一ヵ月の間凄まじい状態での入院生活が始まった。医師がまだ脳の中が固まっていないので動かないようにと指示されるにもかかわらず、歩く練習がしたい、杖を持って来い、と激しく責められ私はたじたじとなった。
病院の外へ連れて行けと言われ、看護師さんの目を盗んで車椅子に乗せ病院の庭で西瓜を食べさせた。訳のわからぬ人間となり、私にはまるで怖い猛獣のように思えた。
一ヵ月で退院を強制される緊急病院なので、その後は自宅で薬を飲みながらの生活が、長い長い療養生活へとつながることになった。
私がパソコンを始めたのはそれを機にしてのことだ。
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子