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第四話 くらしの中で

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その二


最近孤独な魂が繋がっていた一本の糸が死という残酷な事象により断ち切れた。
これまで母や夫、友との死別を経験してきたが、対面していない人とのこんなに悲しい別れを味わったのは初めてだった。

末期の頃の病床で、私の送る、或る時は励ましの言葉や出先の写真に、これまでと同じように返信があった。胃ろうになった時でさえその状態の写真を送ってくれるゆとりがあった。

だが何か月も経たない内に、返信の内容は変わって行った。
苦しい・・という文字が書かれているだけの返信。
私も一緒に苦しみを味わっていた。
死の数日前に書かれた文字は「早く楽になりたい」「殺してくれと言いたいほど苦しい」という文字だった。

私は送る言葉も知らず、そのままにしていた。

或る朝ラインの着信音が鳴り開けてみたら、ご家族からの訃報の連絡メールだった。最後の最後まで力を振り絞って返事を書いていた姿を想像したら、涙がぽろぽろ零れ落ちた。

一日の内何度もその姿を想像して涙がこぼれる日が続いた。
歳の差、環境の違いなどでほとんど実状を知らない間柄だったが確かにどこかで結ばれている糸を感じていた。

その糸は相互の敬愛と孤独という名前しか思い当たらない。
今は安らかに眠っているだろうその魂を歓んであげたい。


作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子