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第四話 くらしの中で

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その5


私は自分なりに、子供との意思の疎通を良くする為に親子関係の講座を受けたり、心理学の本を読み漁って心の動きを知る手段としてきた。こんな苦労のお陰か、高慢な気持ちもなくなり何を言われても受け入れられる人間にさせてもらった。
今は二人の子供らは私にうれしいことを言ってくれる。お金に困らない暮らしができるのは先祖のお陰と感謝しているようで、帰省の折には自分の意思で墓参りをしている。

何よりうれしいのは私自身が何事にも耐えられる人間になったこと。

夫は還暦を境に脳梗塞を患い精神病的な言動が単発的に出るという、私にとってはすこぶる恐怖の14年間だったが、何があっても、たとえ殺されても最後まで看取ってやりたいという信念は変わらなかった。

そういう意味では夫のほうも、自分の死後に私がお金に不自由しない生活をさせようと色々考えていたようで、今私はその恩恵を受けて何不自由なく暮らしているので皆から羨ましがられている。

何が良かったか悪かったか、私が悪かったのか、夫が婿に入って辛いと思っていたからなのか、わからないが、今は子供たちと一人の孫が健やかな未来を生きてくれることだけが唯一の願いだ。


作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子