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第四話 くらしの中で

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その3



良いことばかりは続かないもので、気楽な時期から突然子供の状態に異変が起きた。それからというもの夫はそのことを私のせいにして怒ってばかりいた。きもちだけでも支え合っていたならと思うが、夫は夫なりに私のしてきた子育てに常々苛立ちを感じていたようだ。
たしかに私は母性豊かでもなく立派な母親とはいえなかったかもしれないが、自分なりに頑張っていたつもりだった。

健康のことには気をつけて食事を作り、沢山の本も買い与えたり、塾が無い日には公園で遊ばせたりもした。土曜日の夕食はいつも塾が終ったあと、二人の子供を連れて近くのラーメン屋に行くのも楽しみだった。そこに父親が加わって親子四人で行けたなら子供たちもさぞうれしかっただろう。
だが、夫は趣味の囲碁クラブに入りびたりで勤務以外家に居ることはほとんど無かった。

何と言っても家の舵をとる船頭として将来を判断する能力は男のほうがある。
私が生活や子供の細かいことに気をつけても先の方針を決めるのは夫だった。

子供が学校を拒否していた或る期間、他県のフリースクールにやらせることを提案したのは夫だった。私は言われるままにそういう場所を探し当てて、自宅と子供の所を行き来する生活を頑張った。

小さい車に乗って海を渡り、県外の小さなフリースクールに子供の居場所ができた。勉強をみて下さるボランティアの方には大変お世話になった。中学二年のはずの娘が次第に本来の姿を取り戻していく姿をみるのはうれしかった。

作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子