第四話 くらしの中で
その二
前者の例で自分のことを挙げると、確かにその論理は正しいと確信したことがある。どん底の状況から思いがけない展開で好転したというものだ。
そこに行き着くまでには、数えきれないほどの不安が心をよぎり、その度に私は打ち消した。
何年となく繰り返しているとそのことが習性となり、どんな危機に陥ったときでも不安を抱かないようになった。必ず窮地から抜け出して良い方向に向かうと信じることができるからである。
もう一つ自分の例であるが、これはそんなことはないだろうと思いつつ、否定的なことを思ったことがある。
もう二度とここには来ないという気持ちを何度も心の中で繰り返していた。
子供の言ったことだし、また来るようになるだろうとの気持ちも心の片隅にはあった。
その後私は激しい腰痛に襲われ何年も完治しない状態になった。
そして世の中はコロナが蔓延し県外への出入りができなくなったのだ。
あのとき心に抱いた思いが、本当の気持ちではなかったにしろ、それを現実のものとする何かの力が働いたとしか思えない。
最近では心理学や仏教の本でなくても、そのことは当たり前のように言われるようになった。
若い年代は一応生存期間が長いとされるので、この法則を自分のものとして実行すると良いのではなかろうか。
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子