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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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応接間のような部屋まで、真っ白だ。気味が悪い。

俺が廊下に戻ると、一人の眼帯をしたヒューマノイドロボットが現れ、それから彼は無言で俺をこの部屋に通した。でも、まだ部屋には誰も来ていない。

部屋の中央には大きなローテーブルがあり、その真上には、シャンデリアに模した照明が掲げてある。テーブルを回って四つのソファが置いてあるが、それはテーブルからも少し離してあって、足を寛げやすそうだった。

床には真っ白な絨毯が敷いてあり、壁も床も、強迫的に白い。まるで何かに駆られた病人の家のようだ。そんな様子を、格子ではめ殺しにされた窓から入る陽の光が、照らしていた。


ところで、俺が撃たれて出血したはずの足は、もう痛くもなんともない。緊急事態と思って動いていたから確認が遅れたが、血どころか、傷痕すら残っていなかった。

“医者なんて居なさそうだが…”


俺がそんな考え事をしていると、入口の扉が音もなく開き、ロボットの足音がカツコツとして、その後へ、ゆっくりと老人が歩いてきた。

「やあ。先ほどは失礼したね。傷は治ったかな?」

俺は、自分が老人を充分に警戒している事を確かめてから、話に応じる。

「ええ。もう治っています」

老人はソファへ大儀そうに腰掛け、ロボットはそれを手助けしたそうに見守っていた。

「よっこいしょ。いや、すまないね。歳を取ると体も上手く動かんでな。お茶はおあがりにならないのかな?」

テーブルには、ロボットが出してくれたお茶があった。でも俺は首を振る。

「コーヒーの方が好きなんです」

「そうかい、そうかい。そりゃあすまなかった」

そんな無駄話をしに来た訳じゃないだろうと、俺は老人を睨みつける。すると彼は、ニマニマっと笑った。

しばらく黙っていたが、老人は目だけで俺を見上げてにやにやと笑いながら話を始める。

「君がどこから来たのか、何のために来たのかは、ある程度の想像はつく。それは何も、歳を取っているからじゃない。まあそれはいいが…単刀直入に言おう。私が君に教えてあげられる事はなにもない。お茶を飲んだら、お帰りなさい」

俺はその時、一度頷き、自分に承認を与えた。そして、手の中のナイフをまた出し、老人に飛びかかろうとする。

気が付いた時には、俺は天井を向いて倒れていて、目の前に眼帯野郎の顔が見えた。奴は大きく目を見開き俺を見詰めていて、俺の喉元には大きな刃物が突きつけられていた。眼帯野郎の左腕だ。

「降参。わかったよ。帰る」

そう言うと、眼帯野郎はどいたが、彼は老人の近くを離れようとしなかった。


奇妙な事に、俺は玄関までロボットに見送られ、外に出た。その時にはオールドマンは居なかったので、俺は恐らく“彼”と思しきロボットに、こう話し掛けた。

「エリック。お前も、俺に何も教えられない立場かな?」

そう言っても彼は目も上げず、俺に丁寧な会釈をしただけだった。



しかし、これでどうやら、デイヴィッド・オールドマンがターカスに何らかを施して彼を密かに隠していて、それは口外出来ない目的のためだったという事は分かった。

オールドマンは、出来るなら人殺しはしたくないらしい。少なくとも、今は。

エリックの様子は聞いた話と大分違ったが、所有者が変わってプログラミングが変更されれば、ロボットはそんなもんだ。ただ、やはり奴は、軍事的改造を施されている可能性が高い…



俺は、それらの報告を持ち帰り、“さて、どいつにどれを喋ろうか”と考えながら、シップからアメリカの大地を覆う畑を眺めていた。