メイドロボットターカス
「エリック、ホワイトハウスを襲撃するとなったら、それこそ建物自体を攻撃する方が可能性は高いですが、あそこほど頑丈な建造物はないのですよ」
私は続けてエリックを説得していた。彼はかえってウキウキしているように私を振り返る。
「わかってるさ。お前にはまた、偽の通行証を持ってもらう」
「そんな!ポリスは騙せたとしても、ホワイトハウスを騙せるわけがないじゃありませんか!」
私がそう叫ぶと、エリックは立ち止まり、私を振り向いて不敵に笑った。
「あの建物で、唯一自由に動けるのは誰だと思う」
「誰です?」
「分からないのか?大統領本人さ。そのIDを偽造するんだ」
「まさか!」
エリックは前を向いて歩き始め、「そのまさかさ」と言った。私達はその時廊下を折れ、元の小部屋から漏れる灯りが見えてきた。
「大統領と副大統領のIDだけは、偽造を防ぐため、ワンタイムで生成される。それをシステムに侵入してコピーするんだ。そうすれば後は使いたい放題で、25分のタイムリミットが課されるのさ。お前は、声紋や虹彩くらいなら、偽装して情報送信が出来るだろう?」
部屋の中に居たロボットに声を掛け、彼らを立ち上がらせると、エリックはもう一度私を見た。
「言ったろ。俺は大物なんだ」
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎