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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第33話 不自然なケース





「エリック。あえてホワイトハウスを狙うのはなぜです?大統領が外出したところの方が楽じゃありませんか」

「奴らがぐっすり休んでいるところをガツンとやった方が、気分がいいからさ」

「本当にやるのですか?まだ戻れるのですよ?充分にやりようがあるのです」

「くどいなお前は。ないよ。俺にとっては道はこれだけだ」

私達はまた押し問答をして、結局ホワイトハウスへ向けて移動する事になってしまった。




メルバはもう一度私と組んで、今度はマクスタイン氏の住んでいた家へ赴き、何か証拠のないものか探っていた。

「まあ捜査本部が探して無かった物を、俺達に見つけられるわけもない、か…」

そう言いながらメルバは床の下足痕をスキャンし、空気中の残留物を分析していた。

私は戦闘用ロボットなのでそのような事は出来ず、慎重にくまなく周囲を観察していた。そして一つ気づいた事があった。

「おかしいな」

そこはマクスタイン氏の仕事部屋だったので、そのデスクには仮想コンピューター端末が置かれているはずだった。シルバと同じようなサイコロ型の物が。

でも、死後にどこかへしまいこんだのかもしれないと思い、私はとりあえずデスクの中で、鍵の掛かっていない引き出しを開けた。そこには何も入っていなかった。

引き出しに何もないとは妙だなと思って、鍵の掛かった方を、突っかかって開けられないだろうと思いながらも引くと、意外にもそれはすんなり開いた。でもそこにも何もなかった。

私は後ろを振り向いた。するとメルバは床の痕をさらおうとしていたので、こう声を掛ける。

「メルバ、どうだ」

メルバは振り向いてこちらを見た。

「この家には捜査本部の人間が15人入ってきている。中にはロボットも居たみたいだけど、それは多分この家に元から居た“エリック”だろう」

私はメルバに近寄り、彼が照射したセンサーライトで照らされた床を見た。

人間の靴跡は大層絡み合っていて判然としなかったが、部屋の中を縦横無尽に歩き回った痕のようだった。

「一応この足跡をシルバに送って、データを特定させるよ」

メルバは何気なくそう言ってこめかみに手を当てていた。彼の目の奥が写真を撮るように僅かに動いているのが分かった。それを確かめた後、私はメルバと話をする。


「マクスタイン氏に遺族は?」

「居ないはずだぞ」

「それならなおさらおかしい」

「何が」

私はちらとデスクを振り返った。

「この部屋からはおそらく何かが持ち去られている。それも重要な何かが」

「はあ?デスクをこじ開けた痕でも?」

「いいや、ない。だが引き出しには何もなく、端末も残っていなかった。それに、鍵が掛かるはずのところも何も入っていなかった。ただ、あのデスクでマクスタイン氏が仕事をしていたのは確かのはずだ。死ぬ前にマクスタイン氏がそれらを片付けたとするのは不自然だ。事件性があるなら誰かがそれを持ち去ったと考える方が、より理解しやすい」

私がそう言った時、メルバはピンときて目を見開いたが、それを収め瞼を寝かせると、「それもそうだな」とだけ言った。

「それで、そういう記録を君はポリスのケース管理書で見つけたか?」

「いいや」

私は彼としばらく見詰め合った。彼は何も言わなかったが、やがてデスクの方を見て、目を細めていた。

「どういう事だと思う?銭形さんは」

「私は、ポリス自体がマクスタイン氏の死に関わっているか、マクスタイン氏の死に乗じて何かを持ち去ったと考えている。その品はポリスに不利な物だろうとも」

「帰ろう。大体分かった」