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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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““エリック”を探しなさいよ!”

私がそう言った事に、シルバ君だけが反応した。

「僕も同感です。通常で考えれば、ターカスがどこかへ紛れ込むのは可能かもしれませんが、エリックに出来るはずがありません。彼はターカスと違って、隠密行動の出来るロボットではありません。それが見つからないとなると、なんらか、悪事を企んで懸命に逃げている可能性の方が高いです。破壊されているわけではなさそうですし」

その場は少しどよめいたけど、結局、「エリックを探そう」という話にまとまった。私も涙を収めてテーブルに就き、マリセルとチェスをしていた。


「いいえ、アームストロングさん」

「はい、マルメラードフさん」

「わかりました、銭形さん」


シルバ君は、渡された意見へすぐにレスポンスをする。大人とまるで同じ地平で話しているみたい。子供の姿なのに。“ちょっと悔しいな”と思ったけど、私は普通の人間だし、ポリス特製の捜査ロボットに敵う訳がないのは分かる。

しばらく見守っていると、シルバ君は結論を出した。

みんなを集めて居間の真ん中を向き、仮想ウィンドウを背に、シルバ君はこう言った。

「“エリック”の存在を肯定出来る要素は、何一つありません。防犯カメラも、衛星検索も、なんらかのゲート通行履歴も、すべて。つまり彼は、もう破壊し尽くされている可能性の方が高いです」

アームストロングさんはそれを聴いて、ただ、「そうか」と頷いた。マルメラードフさんは、「本当にそうなのかね?」と食い下がる。銭形さんは何も言わなかった。

マルメラードフさんに向かって、シルバ君はこう言う。

「おそらくは、過去都市ケルンにおいて、僕達が見つけられなかっただけで、完全に破壊されていたのでしょう。ターカスに塵にされたかもしれません。そうなっていてもおかしくないんです」

「そうかね…」

私は、ここ数日の目まぐるしい状況の変化についていけなかったけど、一つ思い出した事があった。

「ねえ、シルバ君…」

「はい」彼はこちらを向く。

「エリックは、「自動射撃システムが止まる時間を知っていたかも」って言ってたでしょう?あれはそういう事なのよね?」

「はい、そうです」

「隠密行動は出来ないのに、そんな事が出来るものかしら?」

シルバ君は不服そうに俯いていたけど、私を見て「いいえ、出来ません」と言った。それで私は、ちょっと嬉しくなる。すると、私の右隣に居た銭形さんがこう言った。

「ホーミュリア様、それは、「彼にも隠密行動が出来るかもしれない」という意味ですか?」

私はその時、ちょっと怖かった。「そんなはずはない!」と叱られそうな気がして。でも、こうまで来たら、言うしかないわ。

「ええ、そうです」

意外にも、銭形さんは怒鳴りだしたりする事もなく、立ったまま下を向いて、「フーム…」と考え込み始めた。

でも、素人の私の意見を、捜査員が認めてくれるはずはないと思っていたので、私は後ろ向きに考えていた。そこへ、アームストロングさんがソファから立ち上がり、私を振り向く。

「ヘラ嬢。それは大変に難しい事です。ですが、エリックがターカスを連れ去ったと考えると、これまで確認した情報がすんなりとまとまるのも、事実です。シルバ、君が確かめた情報を疑うわけじゃないが、なんとか、今からエリックの居場所を特定する方法を考えてくれないか」

シルバ君は、さっきよりも不満そうだったけど、一つため息を吐くと、「わかりました」と言った。