メイドロボットターカス
「これは…」
私の手の中に、ロボットの目の部品があった。それは、アームストロングさんが渡してくれた。
「見覚えはありませんか?ヘラ嬢」
私に心当たりはなかった。だから私は「ありません」と言う。
その時、ソファで仮想ウィンドウをタップしていたシルバ君が振り向いた。
「ありました、アームストロングさん」
それでアームストロングさんも後ろを向き、シルバ君のウィンドウへ近寄っていく。私は手に持った目をどうすればいいのか分からなかったけど、そのまま持っていた。
「ほう、真っ当な家庭用ヒューマノイドだな」
「主人は、ポリスの職員のようです」
遠くに居た私にも、ポリスの職員さんの名前が見えた。
「ジミー・マクスタイン、か。ではまず、この家に行ってみよう。銭形、君も来てくれ」
アームストロングさんと銭形さんは頷き合って、シルバ君は仮想ウィンドウをすべて閉じる。私はその時、ドキドキして、怖かったけど、居間を出て行こうとした二人にこう言った。
「私も連れて行って!」
二人は振り向いて、怪訝そうに首を傾げる。それからすぐに「ダメです」と言った。
「お嬢様、これは危険な仕事です。あなたを連れて行くわけにはいかないのですよ」
アームストロングさんがそう言うから、私はもう一度繰り返す。
「いや!ターカスを連れ戻すんでしょう!?私が行かなくて、どうするっていうのよ!」
銭形さんはため息を吐いて額に手を当てた。
「我々はあなたを守るのが仕事なんだ。こんな事に関わらせたなんて知れたら、クビが危ないんです」
その言葉に私は反論出来ず、その間にドアをくぐっていった二人を睨みつけ、じっと黙っていた。
何も出来ない自分が情けなかったし、ちゃんとターカスが帰って来るのか分からなくて、私は不安だった。
「お嬢様…」
マリセルが心配そうに私を呼ぶから、仕方なく私はテーブルに戻った。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎