メイドロボットターカス
私とメルバは、マルメラードフ氏の運転でまた「ケルン」へと赴いた。そこにはもうステルス化の施されていない白い家があり、私達はまずその家から始めて近辺に何かターカスの痕跡がないか探っていた。
家の中は人が居なくなったもぬけの殻らしい佇まいで、キッチン、ベッドに、テーブルとウサギ小屋があった。大して見る物もなかったので私達は家を出て、広範囲の探索をしようと話していた。
「俺はこっち、銭形殿、あなたは逆の方向を」
メルバは私をあまりよく思っていない。私はそれが少々気になってはいたが、子供の機嫌になど構っていられないので「そうしよう」と返事をして、私達はそれぞれ逆方向へと飛んだ。
燃焼室を開き、レンズをハイスピードモードにして、速く行き過ぎる景色を丁寧に確かめながら飛ぶ。私は白い家の近くを通っていた川に沿い、地面すれすれを飛んでいた。
大分遡ったあたりに、木が何本も倒れている場所がちらりと見えた。
“あったか”
私は、やっと見つけた倒木に近づいていった。
その辺りの草木は焼け焦げていて、地面も、ロボットが地上で高速移動をした時に特徴的な削れ方をしている。ただ、それは大きく長く続いていた。
焼け跡を辿る間にメルバを通信で呼び寄せ、私は地面にまだ何かがないかスキャンをしていた。すぐにメルバは私の所へ飛んできた。
「見つかったのか!?」
「痕だけだが」
私は捜索を続けながら振り向かず答えた。
「これは…」
メルバは驚いたようにそうこぼす。彼にもその焼け跡がどんな意味を持つのかは、分かったようだった。私達は二人で黙々と辺りを探し回っていたが、メルバが立ち上がった気配がして私は振り向く。
「これ、目だよな」
彼は片手にロボットのレンズを持っていた。それはターカスの物ではなかった。私はメルバに近寄り、慎重にその目を眺める。
「帰ってシルバに預けよう。誰の物か分かればターカスを追う事も出来るかもしれない」
「ああ」
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎