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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「それで、どのように動くつもりですか?勝機はあるのですか?」

私は、エリックと押し問答を繰り返した上、彼の意志は絶対に曲げられないと分かり、ひとまず彼の作戦を聞いていた。

「ポリスに居る時のグスタフは、ポリスが保有する武力の強いロボットに囲まれてる。武力を行使出来る組織なんだから当たり前だ。ただ、奴はほとんど家に帰らないらしい。それに、家にも戦闘用のロボットがわんさか居る。でも、家の方が警備は手薄だ。あくまで個人宅だからな」

あちこちに目を走らせながらそう言ってから、エリックは私の目を見た。

「だから、家に居る時間を狙う。ただ、その前にグスタフに指示を出しているのは誰なのかを突き止めなきゃならない。だから、お前達には、グスタフの情報を集めてもらう」

「ふうむ…エリック、あなたの情報収集は上手くいかなかったのですか?誰かがグスタフに指示を出していると分かったのは、なぜです?」

私がそう聞くと、エリックは目の前に小さなメモ用紙を1枚出した。初めは真っ白な紙だと思ったが、よくよく見れば、文字を書いた下に敷いてあった紙なのか、凹凸が見えた。だから、何が残っているのかを私は読む。

“07.10 ウイスキー10本、ジン20本、サケ1本”

「これは…?」私はメモ用紙を手にとってまじまじと見てみた。確かに、日付と酒の名前が並んでいる。僅かな跡だったが、はっきりと読めた。

「おそらく、隠語にして書いた、武器売買の注文書だろう。同様のメモをあと2枚見つけた」

「それは、一体どこで?」

「グスタフのオフィスさ。俺は、主人の葬儀の日程を伝えて、今までの感謝をしたいと嘘をついて、ポリスに入る事が出来た。それで、なんとかグスタフが居ない時間に、奴のデスクを探ったんだ。その時に、主人が日記に書き留めていた内容と同じ、このメモを見つけた」

「あなたのご主人は、どんな事を書き残していたのですか?」

そこでグスタフはちょっと上を見上げ、思い出しているようだった。

「“ウイスキー”は銃、“ジン”はおそらくレーザー砲、“サケ”は多分…大型のボムだ」

私はびっくりして、「そんな!」と叫んでしまった。

大型のボムには、都市を一つ焼け野原にする位の威力がある。そんな物をポリスのトップが他に売り渡すなど、考えられなかった。

「そんなもこんなも、事実はそうなってるはずだぜ。主人は、こっそり忍び込んだ武器庫の中で、空っぽになったボムの格納庫を見てる。日記にそう書いてあった」

私は驚愕し、事の重大さを理解した。だが、やはりもう一度エリックの説得を試みる。

「エリック。事を明るみに出せばいいだけなのです。何も殺す必要などない。だって、もし彼が世界連の裁判に連れて行かれれば、死刑は免れないでしょう。それでは不満なのですか?」

私が喋っている間から、エリックは呆れ笑いと共に、首を振っていた。

「ターカスよ。ここまでする奴が、世界連さえ掌握しているかもとは思わないのか?これがもしかしたら、世界連すら巻き込んだ、いやさ、世界連こそが主導する争いだとは、想像しないのか?」

私はそれを聞き、絶句してしまった。