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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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マルメラードフ氏は、長い事、ウィンドウ越しに世界連の上司と話し合っていた。それで彼は、どうやらこうやら、継続して衛星の情報を提供してもらう許可を得た。

シルバはそれで情報探索のために使えるシステムが増えたが、だからと言ってすぐに見つかるわけではなかったらしい。

世界連の衛星をすべて動員しても、ターカスの痕跡さえ見つけられなかった。

「ダメです…出ません」

お茶を飲んでいたマルメラードフ氏は、顔を上げる。

「そんなはずはなかろう!衛星をすべて使えるというのに!」

「ええ、そのはずなんですが…どの衛星からターカスの型番、「GR-80001」にアクセスしようとしても、検索結果は0件なのです」

「ええ?という事は、彼はもう破壊されてしまったのかい?」

「そうなのかもしれません。なぜ、誰がそうしたのかは、分かりませんが…」

ヘラ嬢は食事をしていた時にそれを聴き、動揺してしまったようで、泣きながらテーブルを去った。


私はそれから、もう一度銭形とメルバに「過去都市ケルン」に行ってもらい、今度はターカスの痕跡がないか、捜査をしてもらう事にした。マルメラードフ氏は、上司に対して「戦争兵器が消えたんですぞ!絶対に捜査の必要がある!」と息巻いて叫び、今一度の射撃システム停止をしてもらった。



私とメルバは、マルメラードフ氏の運転で、また「ケルン」へと赴いた。そこには、もうステルス化の施されていない白い家があり、私達はまず、その家から始めて、近辺に何かターカスの痕跡がないか、探っていた。

家の中は、人が居なくなったもぬけの殻らしい佇まいで、キッチン、ベッドに、テーブルと、ウサギ小屋があった。大して見る物もなかったので、私達は家を出て、広範囲の探索をしようと話していた。

「俺はこっち、銭形殿、あなたは逆の方向を」

メルバは、私をあまりよく思っていない。私はそれが少々気になってはいたが、子供の機嫌になど構っていられないので、「そうしよう」と返事をして、私達はそれぞれ逆方向へと飛んだ。


燃焼室を開き、レンズをハイスピードモードにして、速く行き過ぎる景色を丁寧に確かめながら飛ぶ。私は、白い家の近くを通っていた川に沿い、地面すれすれを飛んでいた。

大分遡ったあたりに、木が何本も倒れている場所がちらりと見えた。

“あったか”

私は、やっと見つけたと思って倒木に近づいていった。

その辺りの草木は焼け焦げていて、地面も、ロボットが地上で高速移動をした時に特徴的な削れ方をしている。ただ、それは大きく、長く続いていた。

焼け跡を辿る間にメルバを通信で呼び寄せ、私は地面にまだ何かがないか、スキャンをしていた。すぐにメルバは私の所へ飛んできた。

「見つかったのか!?」

「痕だけだが」私は捜索を続けながら、振り向かず答えた。

「これは…」メルバは驚いたようにそうこぼす。彼にも、その焼け跡がどんな意味を持つのかは、分かったようだった。私達は二人で黙々と辺りを探し回っていたが、メルバが立ち上がった気配がして、私は振り向く。

「これ、目だよな」

彼は、片手にロボットのレンズを持っていた。それはターカスの物ではなかった。私はメルバに近寄り、慎重にその目を眺める。

「帰ってシルバに預けよう。誰の物か分かれば、ターカスを追う事も出来るかもしれない」

「ああ」