メイドロボットターカス
「目標地点はかなり近い。お前らレーザー砲を準備しろ。私は空からの爆破を行う。煙幕が途切れた時にターカスがこちらに向かったら迷わずに打て。アレはそんなにヤワじゃない。ちょっとやそっとで破壊なんかできんぞ」
「はい」
リチャードが注意深く下を眺めながら答えて、残る二人もレーザー砲が熱くなりすぎないように気をつけながらエネルギーを上げた。
「それから、1分して私が令嬢を連れ帰らずターカスもお前たちに攻撃をしない場合、ターカスと闘っているのは私だろう。その時は私を見つけて援護射撃を頼む」
銭形が部下にそう命令を与えていた時、マルメラードフは緊張気味に後ろにある戦闘員が座ったシートを振り返っていた。
やがて専用艇は空中で停止する。
「いいか。お前たちだけでターカスと対峙しなければいけない状況が避けられなくなったら、破壊覚悟で全力射撃だ」
「「「了解!」」」
わたしの耳にその時、小さなエネルギー体からの音声が入った。
「いけない、お嬢様が!」
わたしは水辺で捕まえようとした鯉を投げ捨て、慌てて飛行の体勢を立てようと振り返る。その時だった。
「お前がターカスか?」
わたしの目の前に、見たこともない人間が居て、でもすぐに彼が人間ではなく、私より高次の戦術用ロボットと分かった。
「待ちな!逃がさんぞ!」
私は飛んだ。走った。しかし相手はあくまでも私を追い続け、私たちは林の中に飛び込み、そこでもつれ合った。
ずざざざっと林の斜面を削りながら、私は彼を吹き飛ばそうと何度も爆撃を試みたが、彼の体には傷一つ付いていなかったようだった。
“こんなことをしていたら、お嬢様が!”
「放してください!お嬢様が!」
私がそう叫ぶと、彼は自分の両手で私の両手首を掴んだ。
すると私の両手首は離れなくなり、すぐさま両足も同じように何かで縛り上げられた。
私は林を突き抜けた芝生の上に転がりながら、自分を打ち倒した者を見上げる。
「磁力錠だ。同じ戦闘ロボットの君になら分かるだろう。さあ、ヘラ嬢はどこだ?」
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎