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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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私がエネルギーを取り戻し、目を開けた時には、目の前は暗闇だった。

腕はまだ磁力錠で縛られているらしい。足を動かそうとしたら、分解されているのか、私の足はなかった。

ここはお嬢様の気配すら追えない、過去都市ケルンよりも600km以上は離れた土地のようだ。周囲の空気の動きや、感じ取れる音声からは、地下であることくらいしか分からなかった。

「誰かいないのですか。ほどいて下さい。私をどうしようと言うのです」

どうやら音声システムも正常に動作している。まだ破壊され尽くしてはいない。動力炉の隣にある、思考を操るスケプシ回路もこの通り正常だ。

するとすぐに近くに何かのエネルギー波動を感じた。それが先ほど私を追い詰めた彼のものであると分かったので、私は、自分が彼に捉えられたあとで拘束されているのを理解する。

「水素はもう充分かな?先ほどは失礼したね」

「…あなたは誰です」

「名乗るほどの者じゃない。こちらの言うことを聞いてくれさえすれば、足はすぐに元に戻してやるよ」

私は注意深くそのエネルギー体の動きを見張った。スキャンに使うセンサーは目を通さずとも、いくらかは動作する。

レーザー砲が内蔵されている。高機能な方だ…磁力を操っていた腕に付いているらしい…

飛行のための燃焼室は、私より高品質だ…追いつかれるはず、か…

動力炉は、もちろん私よりも後に開発されたものだろうと思っていた。しかし、意外にもそれはおそらく腹部に内蔵されており、私より少し大型だった。

燃焼室とレーザー砲は、もしくは後付けの可能性がある…だとするなら、個人的に違法な改造を施されたロボット…

ロボットに過剰な兵器機能を取り付ける人間がどのような目的を持つかくらいははっきりしている…

「あなたはテロリズムを起こそうとしている組織の一員ですね」

私がそう言うと、私たち二人しか居なかった小さな部屋は、その彼の大笑いで空気が揺れた。

「アハハハ…こりゃあ一本取られたな。もちろんそうだ」

「そのような方に差し上げるものは何もございません」

「いいや、聞いてもらう。たとえばそうだな、“お嬢様”のためにな…」

私がそれを聞いて動転すると、急に目隠しが外され、視界が開けた。

目の前には、遠隔監視ウィンドウが出力されており、そこにはなんと、おそらく今のヘラお嬢様の姿が映っていた。

誰かに手を引かれて、お嬢様はうつむきがちに、私たちの家から出て行こうと歩行器を動かしている。

「お前を捕まえるのに手間取ったからな、この嬢ちゃんは捕え損ねたが…もしこのあと、屋敷に戻ってこいつらが帰ってからでも、俺たちならなーんでもできちまう…」

私が負わせた爆発で部品を破損したのか、彼の顔には、さっきまではなかった眼帯がされていた。

「…外道!」

世にもおぞましい笑い声が響き、私は必死でお嬢様を見守っていた。