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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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そのあと、マリセルはすぐに倉庫から戻ってきたが、彼は真っ青だった。


「た、大変です…!お嬢様は…やはりターカスにさらわれておりました!」

「なんだって!?」


戻ってきたマリセルは、前当主が残した5冊の分厚い日記を抱えてはいたが、いの一番に、小さな紙切れを私に手渡した。その紙には、真っ黒な焦げ跡のような文字で、こう書かれていた。


“このままここで朽ちていくよりは、いっそお嬢様とずっと一緒にいられる場所へ”


おそらく、熱線照射で紙をうっすらと焦がして書いたロボットの文字だろう。間違いない。

「これがターカスの書いたものだとする確証は」

「それが…念のためと思いまして、ターカスの用意して頂きましたベッドを探っておりましたところ、枕の下にその紙が…」

半べそになったマリセルは、おろおろと両腕を揺らしている。

「ではマリセル。これは証拠としてとっておきましょう。それから、私はもう一本コールをしますが、これはわたくしたちの専用周波を使わせて頂きます」

「どうぞ、ご随意に…」

マリセルは心配そうだったが、私は上司に直接の通信で、「ロボットが令嬢を連れ去ったらしいことにほぼ間違いはない、場所が大まかにしか掴めず、危険な区域であるので、名うての捜査員を増やしてほしい」と願った。それはすぐに承認された。


「間もなく、私のほかに捜査に指名されたものがこちらに来るでしょう。彼らは普通の人間だったりヒューマノイドだったりしますが、泊まる部屋はあるでしょうか?」

「ええ、もちろん。客間もございますし、亡くなられた前ご当主や、それから奥様のお部屋、あと…弟様のお部屋もございます」

「弟?ヘラ嬢には弟がいらしたので?」

するとマリセルはちょっと周りを気にするようなそぶりをしてから、そっとこう言った。

「亡くなられた奥様は、ヘラお嬢様の弟様をお産みになる時に、お亡くなりになったのです…そして、弟様も助からなかったと…その前から用意されていたお部屋は、ご当主が閉めておしまいになったそうです…これは、引き継いだ情報です」

「そうだったんですか…」

“この家も複雑だったんだなあ。それにしても、ヘラ嬢は大変元気なわがまま娘だとか。よっぽどその「ターカス」とやらが甘やかしてしまったんだろう”

“ターカスを倉庫に下げた前当主の気持ちも、わからないでもない。これからは、大人として社交界に入らなければいけなかったわけだし。いつまでも甘えん坊盛りでは、困るだろうからな…”





「ターカス!こっちにおいでなさいよ!魚がたくさんいるわ!」

「ほう、これはおめずらしい。マスですな。今夜はこれをお召し上がりになりますか?」

私たちはターカスの飛行で、川の上を移動して、いい釣り場所を探していた。そこへ、魚がたくさん居る場所を見つけたので、今夜のメニューはマスの料理になった。

「コーネリアへのお土産ににんじんも見つけたし、帰りましょ!」

「はい、そういたしましょう」

私はまた飛ぶためにターカスに背負ってもらって、その時ターカスはこう言った。

「お嬢様、わたくしターカスは、今とても幸福でございます」

「なあに?あらたまって。これからずっと一緒なのよ!そうよ、私も幸せだわ!」

「ありがとうございます…」