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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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353.ふみの日



 毎月23日は、ふみ(手紙)の日らしい。それを知ったのは、小学生の時だった。

「毎月23日はあたしの日。だからこの日は、私に何かプレゼントをして」
近所に住むふみちゃんは、僕らにそう言うと、腰に手を当てて自慢げな表情をした。
「えー、なんでー」
僕らは、口々に喚いて、ふみちゃんの提案に反対の意を示す。
「いいのっ! 私のいうことは絶対なの。分かった?」
ふみちゃんは大声でそのように言い切って、僕らの意見を完璧に封じ込めた。

 ふみちゃんにガキ大将の座を乗っ取られたのは、いつのことだろうか。彼女はいつの間にか僕らのグループに加わり、メキメキと頭角を現して、気付いたらグループを束ねる役割に着いていた。このグループのガキ大将だったはずの僕は、自分でも気づかないうちにその座を奪われていたのだ。それだけでも屈辱なのに、今度は上納金制度の導入というわけだ。
「高山くん。ふみちゃん、ちょっとあんまりすぎるよ」
ガキ大将時代の側近、室田くんが泣き言を言う。
「ねえ、高山くん。ふみちゃん抜きにして、また俺たちで遊ぼうぜ」
これまたガキ大将時代、僕の一番の子分だった堺くんが、苛立った顔でクーデターを示唆してくる。
「うーん……」
二人の言うことはもっともだ。だが、どうにもふみちゃんを裏切るのは申し訳ない気がする。
「なあに、ふみちゃんのことだから、すぐ飽きるよ。それまで適当な石や捕まえたカナブンなんかをプレゼントしておけばいい」
僕はそう言って、二人をどうにかなだめたのだった。

 僕の予想に反して、ふみちゃんはなかなかこの提案を忘れなかった。毎月23日前後に必ず僕らは集まり、ふみちゃんへ何かをプレゼントするのが恒例になった。始めはそれこそ、そこら辺の石ころ (といっても、すべすべだったり、面白い形をしていたり、僕らの中では価値のある石だ)だったり、かまきりなどの虫だった。だが、時を経るごとにその要求は激化していく。宿題の肩代わりや、その日のおやつ、けん玉などの遊び道具がふみちゃんに奪われていくのだ。だが、ふみちゃんにものが集まることに反比例して、グループのメンバーは少しずつ居なくなっていった。室田くんがまっ先に居なくなり、次に、3カ月連続で何も持ってこなかった堺くんが、ふみちゃんに激しく怒られたのを機に行方をくらました。それでも僕はあらがうことができず、どうにかこうにかお小遣いをやりくりして、ふみちゃんにプレゼントを渡し続けていた。

 それから長い月日がたった。いまだに僕は、ふみちゃんに毎月プレゼントをあげている。だが、あるときから、ふみちゃんの様子が変わってきていた。ふみちゃんも僕にいろいろなものをくれるようになったのだ。僕が渡したおやつのチョコを半分、返してくれた、それが最初だった。その翌月には、どうやら手作りらしいクッキーをくれる。それからも、2枚渡した映画のチケットを、1枚、返してくれる。その後も、口づけだったり、両親に会う権利だったり、二人で教会で華やかな式を上げる約束だったり、書類を役所に提出する権利だったり……。
 そして先月のこと。最近は給料ばかりプレゼントしていてすまないと思っている僕に、ふみちゃんはうれしそうな顔で、僕らの新しい命をプレゼントしてくれた。

 今後も、僕らの毎月のプレゼントは続いていきそうだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔