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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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290.つながらない



 つながらない。

 何をどうやってもつながらない。その理由も分からない。ただ、分かっている事実は、一つだけ。つながらないということ、それだけだ。いつからつながらないのか、なぜつながらないのか、どうやってつなげるのか、つながらないとどうなるのか、全てが分からない。

 それならばつなげる必要などないだろう、そう思うかもしれない。でも、みんなはつながらないとまずいと言う。つながるのが一般常識だし、つながらないとやばいみたいだし、普通にすればつながるし、今までつながらないのは見たことがないと、みんな口々に言う。

 仕方がないので、お得意の愛想笑いを浮かべてつなげようとする。だけれど、そもそもつなげ方が分かっていない。つなげ方を聞こうにも、みんなは普通につなげるだけだと言って全く要領を得ない。
 ろくに説明が行えないのに、みんなはつなげられないことをばかにする。何につながったのかも、つながって何を得たのかも、全く説明もしないままで。

 曖昧な笑顔で、そんなみんなをやり過ごす。そして今日もつながらない。多分、明日もつながらない。


 結局、つながらない。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔