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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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299.いいわけはいいわけねぇ



「ありゃ、もうないや」

 いかくんの袋に手を突っ込んでぼやきます。深夜2時。そばにはつけっぱなしのテレビと、空になったビールの缶が数本。

「……どうしようもねぇなぁ」

 ええ、そうですよねえ。こんな大人、駄目ですよねぇ。気付いてはいるんですよ、気付いてはいるんです。どうしようもないのは自分だって。でもねえ、こればかりはねぇ。

「……メンマのびん、まだあったよな、あれでもう2本いくか」

 分かっています、分かっているんですよ。明日の朝一で上げなきゃならない資料、未だ真っ白なのは。でもね、これがやめられないんです。こうやって前後不覚になって管を巻くのがねぇ。

「あーあ。録画したもんも、どれも面白くなかったな」

 こんな状況じゃ、何を見たって面白くはないですよねぇ。だって頭の中に別のものがちらついてるんですもん。ええ、十分、いや十二分に認識はしてるんですよ。

「明日、休んじまおっと」

 はい。もう諦めました。資料ができてなくて怒られるぐらいなら、いっそ全てを投げ捨てましょう。人間のクズってやつかもしれませんねぇ。

 でも、こういう人間がいてもいいよねぇ。いや、こんな繕い方ももはやありふれてますよねぇ。


 ところで、誰にいいわけしてんでしょうかねぇ。ま、どうでもいいですよねぇ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔